実現に近づくSFの社会
最近の世界を見ていると、20世紀中頃のSF作家が考えた社会が現実になりつつある様に思える。
それは、G・オーウェルの「1984年」、A・ハクスレイの「ブレイブ・ニューワールド(素晴らしき新世界)」、H・エリスンの「悔い改めよハーレクインとチクタクマンは言った」、そしてI・アシモフの「裸の太陽」などだ。 社会の変化について考える人はこれらを読んでみるとよいだろう。
最近の世界を見ていると、20世紀中頃のSF作家が考えた社会が現実になりつつある様に思える。
それは、G・オーウェルの「1984年」、A・ハクスレイの「ブレイブ・ニューワールド(素晴らしき新世界)」、H・エリスンの「悔い改めよハーレクインとチクタクマンは言った」、そしてI・アシモフの「裸の太陽」などだ。 社会の変化について考える人はこれらを読んでみるとよいだろう。
コロナ対策がママならず、右往左往する菅首相に是非とも読んで欲しい本がある。 それは「孫子の兵法」だ。 これには戦術よりも戦争をするに当たっての国家指導者の心得、さらにそれ以前に指導者として国民の信任を得るために心得ておくべき事が多数記されているからだ。
これに加えて、マキャベリ、クラウゼビッツ、そしてアダム・スミスやマルクスも読んでいてほしいものだ。 これらには一国の指導者に必須の知識が記されている。 指導者が読むべき本はこればかりでは無いが、これは必須中の必須と思って欲しい。
また一人、20世紀のSFとFantasyに多大な影響を与えた巨匠が亡くなった。
訃報を伝える記事に述べられている「火星年代記」の他、「闇のカーニバル」等、SFとFantasyの境界線上の短編を多数残している。私も若い頃には早川SFシリーズや創元推理文庫に収載された作品を読みあさった。I.アシモフのミステリSFやA.C.クラークの哲学的SFとは異なり、今はやりの妖精や魔法を中心にしたファンタジーとも全く異なる、夢と現実の狭間のような不思議な世界が魅力だった。
今はもう古くさいと言われるのだろうが、あのような世界を描いた物語があっても良いと思う。そう言えば、最近は長編のシリーズ物ばやりで、短編小説は少なくなった。当時はF.ブラウンやE.F.ラッセルなど、軽妙洒脱な短編を書く作家が何人もいたのだが。
「柳の下のドジョウ」を狙うシリーズ物と違い、個々の単品で勝負しなければならない短編は、資金効率優先の今の出版社としては商売がしにくいのだろうか。
若い頃に読み損なっていた「ゲド戦記」を読み終えた。約40年前に本屋で少しだけ立ち読みをしたが、ハードカバーで価格が高かったのでそれきりになっていた。ところが先日行きつけの本屋でペーパーバックの文庫本を見つけたのでまとめて買い込んで改めて読み始めたというわけだ。読み始めから40年がかりの完読といっても良い。
内容は今更言うまでもないが、物語はル・グインらしくゆったりとしたペースで、水彩画のような印象で語られてゆく。このため、最近はやりのライトノベルのつもりで読み出すと、少々疲れるかもしれない。絶叫ももちろん無い。また、ジブリ版「ゲド戦記」しか知らない人は、物語が全く異なるのでまごつくかもしれない。私には原作の方が内容が豊かで好ましいのだが。
やはり著名なファンタジー作家にパトリシア・マキリップがいるが、こちらは全く印象が異なる。水彩画のようなル・グインとは異なり、マキリップの物語はやはり穏やかながら、昼と夜、そして極彩色の光と闇が鮮やかに物語の場面を彩る。最近邦訳が出版された「オドの魔法学校」でもあちこちにこうした場面がちりばめられている。これが淡彩のル・グインとは対照的だ。もちろん両方とも好きな作家であることには変わりがないが。
「ゲド戦記」はジブリが(かなり不満な形だが)映像化したので、今度はどこかがマキリップの作品を映像化しないかなと考えている。しかしジブリの絵には合わないし、ピクサー等の3DCGは論外だ。また、特殊効果を使った実写もしらけそうだ。日本や米国のスタジオでは難しいのかもしれない。むしろヨーロッパの絵作りの方が向いていそうな気はする。
ふと気まぐれを起こして、マキャベリの「君主論」を読み始めた。
まだざっと目を通しただけだが、所謂「マキャベリズム=冷徹な権謀術数論」とは別の面があることに気づいた。
もちろんこの書は小ロレンツォ・ディ・メディチに献呈されたものであり、君主たる者いかにあるべきかと説くものであることには違いない。しかし同時に、被統治者(貴族や民衆)が統治者に対して何を求めるのかを、将来の統治者(君主)に説明するという面がある。
これを今の日本に置き換えると、統治者=首相、被統治者=有権者あるいは国民、と言う事になる。つまり、首相が有権者の支持を得るためにはどう振る舞い行動すべきかと言う読み方もできるのだ。今の政治家にはそのような考え方(教養あるいは素養)が欠けている者が多い。政治家を志す者には是非ともその視点から読んでもらいたい。
と言うわけで面白くなってきたので、もう少し読み込んでみるつもりだ。
ハイテク好き向け;
「1984年」ジョージ・オーウェル
「悔い改めよハーレクインとチクタクマンは言った」ハーラン・エリスン
ワイドショー関係者向け;
「すばらしき新世界」オルダス・ハクスレー
ネット関係者向け;
「裸の太陽」アイザック・アシモフ
「Fはフランケンシュタインの番号」アーサー・C・クラーク
どれも旧いなあ・・・・・
この物語の第一印象は、孤独と安らぎに満ちた青い闇と、そこに浮かび上がる暖かな光りとめくるめく色彩だ。私はこの物語を読みながらシャガールの絵を思い浮かべていた。
物語は、異質なものに対する不安と誤解から始まり、どたばたの騒動と追跡劇、最後は思いがけない者の登場によりめでたしめでたしで終わる、コメディーの典型と言えるスタイルで進んでゆく。悪意の者は登場せず、敵役も自分のあり方と役目に忠実であろうと善意で行動し、傷つけられる者も死ぬ者もいない。いわば子供向けのおとぎ話の形をとった大人のファンタジーだ。
そして一貫するメッセージは、「周りに壁を作らず、異質なものに心を開き受け入れなさい、そうすれば人間はもっと豊かな存在になれる」、という事だろう。
現在世界で起きている紛争の多くは、自分の信仰や主義主張を振りかざし、異質なものを排除しようとする事から起きている。それに対する作家の思いがこの物語を書かせたのかもしれない。
オドの魔法学校,パトリシア・A・マキリップ著,原島文世訳/東京創元社 初版2008.2.15
ISBN978-4-488-52007-6 C0197
退屈しのぎに平井正穂編の「イギリス名詩選」を読んでいて表題の詩に行き当たった。作者はJohn Dryden、17世紀後半の英国の詩人だそうだ。
この詩は当時の二大政党のひとつ、トーリー党支持者の立場から、対立するホイッグを批判するものだが、ホイッグ党をマスメディアに置き換えてみると、現在の日本になんと良く当てはまることだろう。マスメディアと、それが世論を誘導し煽り立てる現在の政治状況が、17世紀の英国と少しも変わっていないことがよく分かる。
民衆の本質は、三世紀以上少しも変わっていないようだ。
「イギリス名詩選」,平井正穂編,岩波文庫 赤273-1(ISBN4-00-322732-X),岩波書店,P108-111
世界では自然災害や戦争、株の暴落などの事件が起きている。本書はそれがなぜ想定外に起き予測できないのか、発生の周期性はあるのかなどを「複雑系の数学」を用いて平易に説明している。本来は数学の入門書だが、ここ数年の政治経済情勢を理解する上での重要な示唆が含まれているので、政治家、経営者、政治・経済の評論家やアナリストたちにも是非読んでもらいたい。
タイトルは何のことかと思うが、内容は歴史的な様々な大事件、たとえば恐竜の絶滅、世界大戦や大恐慌、大地震などが特異な原因無しに起こりうること、そして固有の周期がないことなどを例をあげて説明している。そして、その結果、次にどのようなことが起きるのかについて実用性がある予測や予防策を講ずるのは困難であり、予防のためにとった手段がかえって事態を悪化させる場合もあると述べている。また、専門家の予測は当たらないことが多く、なぜ外れるのかの説明もおこなっている。
本書では、事例の原因や具体的な防止策などには全く触れていない。本書の重要なメッセージは、恐竜の絶滅や世界大戦などの重大な事件や変化は特別の原因がなくても起こりうること、そして次にいつどのような規模の事件や変化が起きるかは予測不能であること、そして最善の対策と思って行ったことが事態をさらに悪化させることもあり得るという事だ。
特に政治家やマスメディア関係者には、政治的な大事件は特定の人物だけが原因ではなく、その背後で時代の空気とでも言う物が原動力になっていること、そしてたまたまその時代に居合わせそれを上手く利用した物がその結果により、英雄にされたり元凶にされたりするのだという主張は深く心にとめてほしい。
特に今、日本人を含めて空気を読んでそれに同調するという傾向が強くなっている。これは著者の言う臨界状態にきわめて接近していることを意味しているのかもしれない。このような心理はいつでも全体主義や国粋主義に変化しうるものだ。群集心理は常に微妙な釣り合いの上にあり、いつでも暴走する可能性がある。これは特に政治家とマスメディア関係者には重要だ。あなたの一言が世界大戦を招くかもしれない。たとえそれが政治に関することではなくてもだ。
よかれと思って何かをする際にも、その行為の悪い影響(これは必ずある)についてもじっくり考慮し、悪い影響が現れた場合の心構えを持って実行すべきだ。これは国家の指導者だけではなく、一人一人の庶民についても言える。砂の一粒の動きが砂山全体の大崩壊を招くこともあるのだから。
書名;歴史は「べき乗則で動く」 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学
ハヤカワ文庫NF
著者、マーク・ブキャナン 水谷淳訳
追記;阪神大震災に触れたくだりでは、震源に関しておやと思う記述がある。しかし、欧米人にとっては日本列島は太平上の島国で、瀬戸内海も太平洋の一部という事なのだろう。
ISBN978-4-15-050358-1 C0140
追記2(2009/10/04);
社会現象については、市場の暴落や流行に関する考え方(P221~)、伝染病の世界的大流行を阻止できない理由(P245~)など参考にすべき記述がある。
時季外れではあるが、心温まる物語を読みたい方にお薦めしたい本が一つ。
「スペシャル・ゲスト」、原題[The Special Guest] リー・アレン著 小畑一美訳
1997年11月20日 株式会社めるくまーる ISBN4-8397-0093-1
報復主義が拡がり始めたように見える昨今、読んで欲しい本の一つだ。
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