ウイーン市が世界遺産指定を返上か?
世界遺産に指定されているウイーンの旧市街での再開発にユネスコが異議を申し立て、ウイーン市と対立しているそうだ。
あくまで現状の厳密な保存を要求するユネスコに対し、ウイーン市は都市の未来のためには再開発も不可欠だと主張しているという。 そして世界遺産指定を取り消すというユネスコの威嚇に対して、ウイーン市は指定を解除したければどうぞと言っているとも報じられている。
ウイーン市にしてみれば、世界遺産の指定を取り消されても今更観光事業への影響はないと考えているようだ。 確かに世界遺産指定を求める動機の大部分は観光宣伝に役立つからだろう。 現在日本で世界遺産指定を求めている地域もすべて、はっきりと観光事業の振興目的をうたっている。 従って観光事業としての宣伝期間が終われば、窮屈な世界遺産指定など不要という考え方は十分に成り立つ。
観光宣伝の道具に堕している世界遺産指定の現在のあり方を、ユネスコは考え直す必要がありそうだ。 さもなければ、世界遺産の看板は安上がりな観光宣伝の役割から抜け出せないだろう。 またユネスコが厳密な現状維持にこだわりすぎると、世界遺産指定を返上する地域が続出しかねない。 地域の変化に対するユネスコの柔軟な対応がなければ、世界遺産は観光地としてのお墨付きを与えるだけの事業になるだろう。 ユネスコは、その地域が生活の場として生き続けるために何が必要なのか、そしてどのような変化は受け入れるべきなのかを地元と話し合うべきだ。
世界遺産に指定されている地域は、歴史の中で変化し続けて成立したものだから今後も変化を続けるのが自然だ。 そうでなければその地域は一般の人々が普通の生活を送ることができないテーマパークになってしまう。 都市や地域は美術品ではないのだ。
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