残業
50年以上昔のことになるが、私の父はキャリアの国家公務員だった。
その当時、管理職になった私の父は午後6時頃までにはカバン一杯の書類を持って帰宅しており、夕食後その書類を調べたりしていた。
そのような仕事は役所でする方が良いのではと私が尋ねると、父は上役が遅くまで役所にいると部下は仕事が無くても帰りにくいし、残業をしている者も上司が気になって仕事に集中できないからだと言っていた。
今の民間企業でも、率先垂範して働くとして遅くまで事務所に残っている上役は少なくない。それでは部下たちは帰りにくいので、何か仕事を作って残業するようになりがちだ。これが事務職の長時間労働の原因の一つだろう。
私が若いころの職場の上司の一人は、午後3時頃になると自分の仕事を全て終えてしまい、定時後の麻雀の仲間を物色していた。そして部下たちが気が散ると文句を言うと、各人の能力を考えて定時までに終わる程度の仕事しか与えていないとうそぶいていた。そして誘われた部下は、可能な限り定時までに仕事を完了し、終わらない者も1時間以内に終わらせて麻雀に参加するのが通例だった。
これはやり過ぎだが、要領よく時間内に仕事を済ませ、定時後は楽しもうと率先垂範していたと言う点で、時間外労働を減らすには良いやり方だったのかもしれない。付け加えると、彼が上司だった間、その部署で仕事が滞って関係先から苦情が来たという事は無かった。
もちろん当時とは異なり、労務が残業が少ないと見るとすぐ人を減らし、残業が多いと餡にサービス残業を要求してくる現在ではこうはできないのかもしれない。残業減らしと過労死防止には、労務担当と経営者の思想改造教育が必要なのだろう。
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