北方領土二段階返還論は事実上の国後放棄
政府内部で、まず歯舞・色丹を返還させ、将来国後・択捉の返還につなげるという二段階返還論が検討されている。これは従来から言われている2島先行返還論と同じだが、ロシアの態度を見る限りではこれはあり得ず、4島返還をあきらめないという見せかけのポーズにすぎない。
ロシアは以前から択捉島と色丹島の開発を外国資本も導入して進めており、これは択捉と色丹は返還しないと言う明確な意思表示だ。それに対し、歯舞島と国後島の開発は手控えており、この2島は変換するというやはり明確な意思表示だ。おそらく島の総面積が近くなるこの分け方が公平だと考えているのだろう。
外交交渉の常識では解決は中をとって手打ちであり、これはこれまでのロシアの国境交渉の全てでも一貫している。なぜならば、当事国の両方ともが譲歩し合ったと言う形がなければ両国政府の体面が立たないからだ。それ故、中国との黒竜江中州交渉、さらにはフィンランドとのカレリア地方の国境画定交渉やその他の交渉でも、中をとって手打ちは貫かれている。つまりロシアは2島以上には決して譲歩しない。4島全ての返還を真に望むのであれば、最初に4島を要求したのが誤りなのだ。
よって、まず歯舞・色丹だけでよいと言えば、日本が国後を譲ったとロシアは解釈しそれが最終決着となる。だから、国後の返還を望むのであれば、歯舞・色丹先行返還などあり得ない。仮に2段階返還を装うのであっても国後・歯舞の2島返還でなければならない。
歯舞・色丹2島返還は日本国民に対する欺瞞と裏切りの行為だ。
追記(2016/10/09);
北方領土交渉の落としどころについて参考になりそうな資料を見つけたのでリンクを乗せておく。ロシアが周辺国との国境問題をどのように解決してきたかがまとめられている。著者は政治学者で北大教授。専門はロシア外交、中ロ関係史。
・「中・ロ国境問題の最終決着に関する覚え書」岩下明裕
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