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March 26, 2016

特許侵害のジェネリック医薬品

読売新聞WEBが、あるジェネリック医薬品にたいして特許侵害をしているとの判決が下されたと報じている。

読売新聞記事;「国承認の後発薬、特許侵害を認定…知財高裁判決
                    2016年03月26日 12時22分

この見出しを読んで、ジェネリック医薬品は特許が切れたので承認されたはずなのにと疑問を感じる人がいるかもしれない。しかしジェネリック医薬品の切れた特許というのは、この化合物を医薬に使うという特許であって、製造方法に関する特許の有無は考慮されていない。医薬に使うという特許と、その化合物を経済的に効率よく作ると言う特許は別々のもので、改良された製造方法の特許が後から出願されると言うことは珍しくない。

元来特許はその目的毎に出願することが出来る。これまで世の中に知られていなかった物質(化合物や混合物)に有用性を見いだした場合には(*1)、その物質について特許を取得できる。この場合、特許に記載された化学構造を持つ化合物の製造と使用が特許で保護される。これを「物質特許」と言う。

また、すでに存在が知られている物質でも、経済的に効率よく製造できる新しい製造方法を発明した場合にはその製造方法の特許を取得できる。これを「製法特許」と言う。さらに、既に知られている方法よりも効率良く製造できる改良製法を発明したり、組成や工程の改良によって製造物の性能を改良した場合にはその方法も特許を得ることが出来る。これを「改良特許」と呼ぶ。

さらにまた、既に存在と製造方法が知られている物質でも、それまで知られていなかった用途を発明した場合にも、その物質をその特定の用途に用いる事についての特許を得ることができる。これを「用途特許」と言う。「医薬特許」は「用途特許」の一種である。

特許の有効期間(*2)は出願日から満20年、または特許公告日から満15年の早く来た方までであるが、「医薬特許」については臨床試験などで承認まで時間がかかることを考慮して5年の延長が認められている。しかし、医薬品の場合、物質の発見から商品化までの期間が長いため、実質的には保護されるのは5~6年しかないとも言われている。そこで医薬メーカーは「医薬特許」の出願後も、その物質の製造方法や医薬品に加工する技術の改良を続け、これら製剤の「製法特許」や「組成物」の特許を後から取得することで医薬品の特許保護期間の延長を図る。

今回の特許侵害判決は、裁判所がジェネリック医薬品製造メーカーの製造方法が先発メーカーの製造特許を侵害していると認定したものだ。この場合、ジェネリック医薬品メーカーが特許に抵触しない製造方法に変更すれば、製造と販売を続ける事ができる。ただし、先発メーカーが特許で保護された有効成分の結晶形や粒度、あるいは添加物で薬効の差別化を行っていた場合には、その特許に抵触しない方法で製造したジェネリック医薬品の薬効が先発品と異なることはあり得る。

ジェネリック医薬品で保証されているのは、有効主成分の含有量だけで薬効そのものは保証されていないと言う事だ。ただし一般には、問題とすべき大きな差は無いと言うことになっている。

(*1);特段の有用性がない場合には、科学的新発見ではあるが特許を取得する事はできない。特許はあくまでも経済的に利用価値(有用性)があることが要求されるからだ。

(*2);特許の有効期間とは、国に維持料を払って権利を維持できる期間のことで、維持料を支払わなければその特許は失効する。なお、維持料は同業他社の事業を妨害する目的などで、自分で使用しない特許を維持し続けるような事をやめさせるため、年数が経過するにつれて高くなるように定められている。

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