刑事フォイル
NHKBSで放送中の刑事フォイルはなかなか見応えがある。英国製のドラマらしいどっしりとした進行と落ち着いた画面構成で、こちらもじっくりと楽しもうと言う気になる。色調はセピアがかっていて暗めだが、最近の日本製ドラマにありがちなただやたらに暗いというものではなく、メリハリが利いていて見やすいのも良い。
さらに第二次世界大戦中の英国が舞台になっているので、当時の社会状況も登場する。陸軍の補助婦人部隊から派遣されている女性運転手は、男手が払底して多くの若い女性が軍に志願して後方任務についていた当時の英国の状況を教えてくれる。補助婦人部隊員は輸送・補給業務の他、司令部の事務業務、通信・管制業務などで人手の不足を補っていたと伝えられている。中にはドイツ軍爆撃機が到達できないスコットランドやアイルランドの工場や飛行場から、南部の前線航空基地に戦闘機を空輸していた女性パイロット達もいたという。
また、航空機好きとしては時折スピットファイアがちらりと登場するのも嬉しい。まだ航空機のデザインに、お国柄や設計者の美的感覚を反映できた時代ならではの瀟洒な姿が好きだからだ。さらに、お転婆な運転手サム(サマンサの愛称)を演じる赤毛の女優(ハニーサックル・ウイークス(*))も、いかにも英国人らしい雰囲気をまとっていて楽しい。
追記(2015/11/03);
11/01の放送では第2次大戦に大活躍した名輸送機の「ダコタ」が登場した。今後も第二次大戦中の航空機が登場するかもしれない。ドイツ機は無理だと思うが、英国機は可能性がある。(ただし、初回にDo-17らしき双尾翼の軽爆撃機が一瞬だけ登場したことがある。)
「ダコタ」は、ダグラス社が戦前から製造した旅客機DC-3の軍用型C-47の英国での名称で、英国でも大量に使用された。DC-3は戦後も大量に製造され、初飛行から80年たった現在も補修や改造を受けながら飛び続けている機体がある。離着陸滑走距離が短く、舗装されていない滑走路でも運用が可能なため、僻地ではまだ必要とされているのだ。あのNASAも、極地の基地でターボプロップ化した改造機にスキーを履かせて科学観測機として使用している。
追記(2015/11/11);
(*)ハニーサックル(Honeysuckle)は「スイカズラ[忍冬]」の仲間の英語での総称。花の蜜が多く、子供が吸って遊ぶことから「Honey(蜜)+suckle(授乳する、育てる)」となったのでしょう。
追記(2015/11/23);
戦闘機乗りの息子アンドリューが登場してからスピットファイアが登場することも増えた。登場するのは、4翅のプロペラと膨らみのあるバブルキャノピーを装備したMk.IX後期型(1943年以降)なので、ドラマの設定の1940年とは合わないが低空を飛び回る姿は楽しめる。
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