4Kテレビで起死回生なるか?
2014/06/02からCS放送で4K試験放送を行う事が承認された。日本の家電メーカーはこれで4Kテレビの売り上げを増やし、テレビ事業の起死回生を図りたいともくろんでいるがうまく行くだろうか?結論から言えばうまくはいかないだろう。
その理由はいくつもあるが最大のものは価格の問題だ。日本の家電メーカーは、高機能高価格の4Kテレビで収益を改善したいと考えている。しかしこれは期待通りには行かないだろう。中韓などの海外メーカーが基本機能に絞った低価格品をすぐに投入してくるだろうからだ。すでに中国では49型で7万円以下と言う製品が発表されている。
価格の問題についてもう少し述べると、現在の液晶パネルの製造技術は日本メーカーも、中韓のメーカーも差がない。これは日本メーカーの主力製品の一部に中韓のメーカーの液晶パネルが使われていることからも明らかだ。従って需要がまとまる見込みが立てば、彼らもすぐに4K用のパネルを作り始める。そして、高機能高価格を狙う日本メーカーに対抗して、低価格製品で市場を支配しようとするだろう。
日本メーカーは現在60型の先行商品を60~70万円で販売しているので、これを40~50万円で売ることをもくろんでいるだろう。これに対し海外メーカーは当初は20万円台を目指すと考える。大型2Kテレビの中心価格は15万円以下であることを考えると、10~20万円を目指す必要があるからだ。海外メーカーは量産による固定費削減でこの価格帯で採算が合うよう努力するだろう。それには多少赤字でも単価を下げて数を売りさえすればよい(*1)。
パネル以外の部品の大半は海外の専門メーカーからの購入になるので、この部分ではコストの差が無い。高機能化に必要な部品のコストも、同じ理由でほとんど差が無い。従って、パネルの製造コストで勝負は決まる。日本メーカーがほとんど使うことがない高機能化で高付加価値を狙っている限り、日本以外では勝ち目がないし、それによってコスト競争力の差がさらに大きくなるだろう。
もう一つは、日本メーカーが期待する日本国内市場に4Kテレビのマーケットがどれだけあるかと言うことだ。現在、市場から32型未満のフルHD液晶テレビは姿を消して、このサイズのフルHDはPCモニター用だけが販売されている。これは人間の目の分解能が関係していると思われる。つまり32型未満のサイズではセミHDでも十分だと言うことだろう(*2)。これから推算すると、60型未満のサイズでは4Kテレビの画素数は価値がない可能性がある。60型以上の大型テレビは、日本の住宅環境では設置場所が限られるので、需要はさほど多くないだろう。
つまり、高機能を売り物に高価格販売を考えていては始めから負けが決まっているのだ。
(*1)固定は製造量にかかわらず総額が一定なので、製造数が2倍になれば製品一個あたりの負担額は半分になる。だから製造量が多いほど製造コストは下がり採算が良くなる。詳細は原価計算の参考書を参照して欲しい。
(*2)CRT時代の高精細PCモニターのドットピッチは0.23mmが標準だった。0.21mmの物が出たこともあったが最終的には0.23mmでまとまった。これが50cm程の距離で見るPCモニターにはちょうど良かった為と思われる。
これに対して、やや離れた距離から見るテレビ画面ではもっと荒いドットピッチで十分だろう。実際に32型フルHD液晶テレビで計算すると約0.36mmとなる。
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