滋賀県で消火訓練中に起きた火傷事故は、アルコール燃料特に低級アルコール燃料に特有の危険をよく示している。
事故を起こした消防団員は、「火が消えていると思って燃料を注ぎ足した」と話していると報道されている。実は、このように火が着いているかどうかわかりにくいのがアルコール燃料の特徴だ。
アルコール燃料は、喫茶店のサイフォン用のアルコールランプや、バーベキュー用のゲル状助燃剤や、旅館や料理店で出される小鍋用の固形燃料などに日常的に利用されている。しかしこれらに共通の性質として、炎が暗いので晴天時の屋外など明るい場所では見えにくい特徴がある。特に背景が明るい場合には、薄青い炎はほとんど見えない。このため、着火しているのに気づくのが遅れて大きな火災になることがある。これが他の可燃性液体とは異なる、低級アルコールに特有の危険性だ。
今回はエタノールだが、メタノールを燃料に使うインディーカーのレース中の燃料補給時に、こぼれたメタノールに引火しているのに気づくのが遅れ、車が炎上したのをテレビ中継で見たことがある。この際、補給係が慌てて補給ホースからメタノールを振りまいため、それをかぶったメカニックにも火が着き、地面を転げ回るところへバケツで大量の水をかけて消火するという光景が見られた。また、脱出するのに時間がかかるドライバーにも同様に水がかけられていた。しかしこの間、テレビ画面では全く炎が見えず、何が起きているのか認識するのに時間がかかった。
このようにメタノール、エタノール、イソプロパノールなどを主成分とする低級アルコール燃料は炎が見えにくい。このため、ゲル状燃料の一部には、炎を着色して見やすくするために金属塩を添加(理科で習う炎色反応の応用だ)している物があると聞いたことがある。しかしそれでも、屋外での認識性が十分に高いとはいえない。従って、低級アルコール燃料を日中の屋外で使用する場合には、着火しているかどうかの確認を目だけで行うのは危険な場合があると言うことを念頭に置いておくべきだろう。
追記(2013/08/05);
実は、粉末消化器や泡消化器ではアルコール火災は消火しにくい。少量(数リットル程度)の水溶性の可燃性液体(低級アルコール、アセトン等)は、大量の水で薄める方法が有効で手っ取り早い。
この点からも、今回の訓練でアルコールを使用したことが適切であったかどうか再考すべきだろう。炎が明るく見えやすいので消火の確認が容易であるという点からは、シンナー類やガソリンの方が安全だったかもしれない。あるいは、ぼろ布にしみこませた灯油も使えたのではないだろうか。
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