否定され始めた株主利益優先の近代的経営
10年ほど前は、物言う株主とそれに応える経営者が現代的な経営であるとメディアにもてはやされた。このため、経営者は首切りと賃金切り下げに懸命になり、それをどれだけできるかが優秀な経営者の尺度とされた。
しかしここへ来て風向きが変わり始めたようだ。安倍政権関係者から次々と賃上げをしない経営者への不満が表明されるようになったからだ。
この10年、延々と金融緩和が続けられたが、支柱に供給された資金は投機に回るばかりで、雇用と賃金は減り続けてきた。これが国内の景気が上向かない原因であるという事に、多くの者が気付き始めたと言う事だろう。政権関係者から、「賃上げをしろ、雇用を増やせ」と言う言葉が続々と発せられるようになったのこのためと考えて良い。
ただしこれは、株主利益を増加させる為には最も手軽な首切りと賃下げによるコスト削減を最優先としてきた(日本の)近代経営の否定であり、投機市場を重視する自由競争経済(市場原理至上主義)の部分的否定でもある。そして、経営者に対する政府による賃上げ要求と言う社会主義的な政策を安倍政権が取り始めたことは、自民党がかつての民社党の政策を取り入れたと言う皮肉な見方もできる。
ともあれ、株主利益至上主義が、部分的にかもしれないが否定され始めたことは、財の生産に立脚した実体経済主義に立ち帰るきっかけとして歓迎すべきだろう。
« じわじわ広がり始めたアベノミクスへの疑念 | Main | 当てが外れた北朝鮮 »
Comments