中国の成長減速
中国経済成長の減速が話題になっている。これまでの10%前後と比べれば少ないとは言っても8%台とまだまだ高いのだが、高度成長時代のバランスを崩すには十分な急減速なのだろう。
実は、高度成長政策でもっとも難しいのは、いつどのようにして安定成長に軟着陸させるかと言うことなのだ。日本でもそうだったように、急成長が続くと都市部と村部の収入格差が広がり社会的な不満が増大する。日本ではこの不満を緩和する目的で繰り返し米価引き上げや農家に対する所得補償が行われた。日本の農業が補助金依存症になった原因はここにある。
また、急成長に伴って上昇する賃金と物価のバランスをとり続けなければならない。これには非常に微妙なさじ加減が必要なのだが、日本では成功していたとは言い難い。高度成長の末期の昭和40年代末には、物価上昇が賃金上昇を上回る傾向が現れ始めていた。そこに、ドルショック、オイルショックが次々に起こり、昭和50年代前半には輸出落ち込みによる不況と、原油値上がりによる激しい物価上昇が襲ってきた。このため日本の経済成長は急減速し、かつての高度成長を取り戻そうとして日本政府は景気刺激政策を続けた。しかし、もはやかつてのような高度成長には戻らなかった。
成長率が回復せず設備投資が低調なまま金融緩和を続けたため、昭和50年代後半になると市場に運用先のない資金がだぶつくいわゆる金余り現象が発生した。これが土地投機に流れていわゆるバブル経済の引き金となった。
当時、金融アナリスト達は地価が永久に上がり続けるニューエコノミーを主張して土地投機ををあおり立てたが、実態は土地のキャッチボールで値をつり上げていただけのことで、循環取引同様実体価値を伴わないものだった。このため、地価が収益可能性を超えて上がり続けることに慌てた政府が金融引き締めにかかると、あっという間にバブルは崩壊した。実体価値を伴わないという点でまさに泡同然だったのだ。
そのようなわけで、いつまでも高度成長を続ける事は社会にひずみを蓄積して不安定にする。そんなひずみを緩和しようとして様々な補助金などをばらまくとかえってアンバランスを拡大してしまう。だから、いつかは高度成長から安定成長に移行させねばならない。そのタイミングとどのような経過をとらせるのか、それを見極めるのが難しいのだ。
最後に、中国の経済は二度と15%を超えるような成長には戻らないだろう。無理に戻そうとすれば、再びバブルとその崩壊後の長い低迷が続くだろう。そしてそれは、国内にいくつもの民族紛争を抱える中国にとって、ソ連のような国家崩壊につながりかねない危険を含んでいる。
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