膨張する災害予測と災害対策
近い将来に発生が予測されている南海地震の新しい被害予想が出された。これによると直後の津波によって9万人以上が死亡するという。
内容は最近流行の被害を大きめに見積もるやり方によるもののようだ。被害予測を大きめに見積もるのは、事前に自治体が出していた被害予測よりも大きな被害が出た場合に訴訟が起こされる事例が何度も発生したからだろう。それによって大きく見積もった被害予測を積み上げるやり方が定着したようだ。
そして上記の死者数は最悪の条件が重なった場合の想定だという。しかしながら、最悪の条件と言うにはいくつかの条件が抜けているようだ。たとえば台風によって高潮が生じているような、平均より潮位が高い場合だ。大阪市は沿岸地域を6mの防潮堤で囲んでいるので5m程度であれば問題がないと主張している。しかしこの高さは、平均潮位もしくは平均満潮位を基準にしているもののはずだ。従って、高潮が発生している場合には津波の高さにそれが上乗せされる。そのような条件では津波が防潮堤を簡単に乗り越えてしまう。そして台風通過中には屋外に出て避難場所に移動することは非常に困難だ。
台風通過中に地震が起きる確率はほとんど無いと、防災学者や自治体は主張するかもしれない。しかし私が中学生の頃、まさに台風通過中の東北地方で震度5の地震が発生したことがある。マーフィーの法則が主張するとおり、悪いことはしばしば最悪のタイミングで起きるのだ。因果関係がない災害が同時に発生することも想定しておくべきだろう。
このような考え方に対しては、災害規模が止めどなく膨張して対策のたてようがなくなるとの反対が出るだろう。しかしそれならそれで従来とは異なる視点から対策を考えればよい。30mの津波に対して予想到達時間内に避難可能な場所がなければそれを作ればよい。高い避難塔を多数作れない(実際に作れば町の眺めが非常に鬱陶しくなるだろう)のであれば、水没に耐えられる地下待避壕を町内ごとに作ればよい。米国の竜巻待避壕のように家ごとに作ってもよい。収容可能人員が半日呼吸可能な空気循環設備とそれ用の内部電源があればよいだろう。
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