ギリシャの連立不調
ギリシャの連立工作が不調に終わり再選挙の実施が決定したそうだ。これを受けてヨーロッパの投機市場は一斉に値を下げている。信用危機脱出が遅れる、あるいは危機が深まることを材料にしてとのことだが、コンピューターのお告げによって右往左往する投機市場らしいうごきだ。
コンピュータ取引がブレを拡大しパニック化する現状はさておき、今回の危機は財政不均衡に端を発しているとはいえ、投機中心の経済運営が問題を拡大しているように見える。投機資金供給に収入の多くを依存する金融機関の救済に国家資金を供給しても、些細な理屈で市場が値下がりすれば供給した資金は消滅してしまう。すると投機組織は狼狽売りに走り、国家資金によるてこ入れを求める。それは、年金などの運用を投機に依存する国家財政とも利益が共通するので、国家は再び資金を注入する。この繰り返しが、状況をここまで悪化させてきた。
その現状はギリシャの再選挙で連立政権が成立しても何も変わらない。現状は、投機依存の経済をいかに切り捨ててそれから脱却するのかを議論することを求めている。フェニキア以来の時間差によって各市場が独立していた時代の投機市場の原理は、時間差が無くなった現代には不適切なのだ。旧弊な市場自由主義は、混乱を拡大するだけで危機脱出の役にはたたない。混乱が収まるまでは市場を規制すべきだ。
それにしても、再選挙によって連立が成立する保証はない。その場合、市場はいかなる反応を示すのか?(予想は付くが・・・・・)
追記(2012/05/16);
夕方の経済番組でEUの財政改善策に反対するギリシャ国民は愚かだと言わんばかりのコメントをしている証券アナリストがいた。ユーロ圏を離脱するとギリシャ人自身が困ることが分かっていないとのことだが、このアナリストはそうとばかりも言えない事を理解していないようだ。
ユーロ圏を離脱すれば一時的に生活が困窮することは間違いないが、中長期的には自国の経済状況を中心に据えた経済政策を自由にとることができるので、回復が早い可能性もある。上記のアナリストはその点を全く吟味しないまま、証券業界関係者の立場のみからコメントしているように見えた。
今ギリシャがユーロ圏を離脱すると、ユーロそのものの信任が揺らぐ可能性がある。そしてこれが、ユーロ経済圏全体に大きなダメージを与えないという保証がない。これは他のユーロ諸国にとって好ましくない。従って他のユーロ圏諸国の利益のためには、ギリシャ人がいかに困窮しようともユーロ圏にとどめておきたいことになる。これはギリシャ人にとっての最善の選択ではない。
以上がギリシャ国民がユーロ圏に留まることが好ましいが、無理をしてまで留まる意志はないと言う選択をした理由と思われる。だから、他のユーロ諸国からの支援が十分ではないと思えば、ギリシャ人は国家財政を破綻させてでもユーロ圏からの離脱を選ぶだろう。従って、他のユーロ国の圧力が露骨に過ぎると、ギリシャ人が反発して一気にユーロ圏離脱に傾く可能性があることは念頭に置いておかなくてはならない。
もちろん、現在の危機の原因が財政危機をここまで放置したギリシャ人自身にあることは間違いないし、日本人にとってこれが他山の石であることもまた間違いがない。
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