阻止できない巨大津波
東海・東南海地震による津波の新しい予測が出された。昨年の東日本震災以後の流行に乗った巨大災害予測と言っても良いかもしれない。
このような「大きめ」の予測が出される背景はいくつかあるが、それについては別稿で述べよう。
このような巨大津波の予測に接して、関係自治体は困惑していると言う。それは当然だろう。高さ30mを超えるような津波を堤防で食い止めようとするのは非現実的だからだ。被害が予想される地域全体にそのような堤防を作るには天文学的な経費が必要であり、これを短期間で建設しようとすれば国も地方自治体も大幅な増税が必要になる。増税を押さえようとすれば、蓮舫大臣があざ笑った100年200年の計画になる。さらにまた海岸の景観や自然も大規模に破壊される。だから巨大堤防で巨大津波を食い止めようとするのは利口なやり方ではない。
それならどうすればよいのか?それは津波をやり過ごす方法を考えることだろう。高い場所までの距離が長ければ、水没しない高い建物を避難所に利用することは誰でも考えることだが、30mと言えば10階建て以上のビルディングが必要だ。そのような高層ビルの数が不十分な地域も多いことだろうし、既存のビルがそのような津波の衝撃(水圧)に耐えられるかどうか再検証が必要だろう。さらに、新規に地震と津波の衝撃に耐える高層の建物を、避難目的だけに作るのは建設費と維持費の両面で合理的ではない。そこで発想を変えて水没に耐える避難所を作るという選択もあると考える。
それはどのようなものかと言えば、低層または地下の水密構造物で数時間の水没に耐えられるようにすればよい。そして、平時は倉庫や駐車場などに利用して維持費の一部を賄うのだ。災害時用物資の備蓄場所に使っても良い。水没中の空気浄化等の動力は、液状化対策を講じた地下ケーブルと非常用発電機を利用すればよいだろう。
この他にも異なる発想による対策はいくつも考えられるだろう。はね返すことができない巨大自然災害に対しては、正面から力業で立ち向かう以外にも、自然の力をしなやかにそらせてやり過ごす考え方も必要だ。
最後にもう一つ。1000年に一度の自然災害に備えるためのこのような施設は、1000年以上補修や改修しながら使い続けられるシステムであることが好ましい。政治家も住民も、施設の設計者にも、国家1000年の計をたてられるだけの知恵が必要だ。目先の利益にとらわれてはそれこそ無駄な施設になってしまう。
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