ゲド戦記
若い頃に読み損なっていた「ゲド戦記」を読み終えた。約40年前に本屋で少しだけ立ち読みをしたが、ハードカバーで価格が高かったのでそれきりになっていた。ところが先日行きつけの本屋でペーパーバックの文庫本を見つけたのでまとめて買い込んで改めて読み始めたというわけだ。読み始めから40年がかりの完読といっても良い。
内容は今更言うまでもないが、物語はル・グインらしくゆったりとしたペースで、水彩画のような印象で語られてゆく。このため、最近はやりのライトノベルのつもりで読み出すと、少々疲れるかもしれない。絶叫ももちろん無い。また、ジブリ版「ゲド戦記」しか知らない人は、物語が全く異なるのでまごつくかもしれない。私には原作の方が内容が豊かで好ましいのだが。
やはり著名なファンタジー作家にパトリシア・マキリップがいるが、こちらは全く印象が異なる。水彩画のようなル・グインとは異なり、マキリップの物語はやはり穏やかながら、昼と夜、そして極彩色の光と闇が鮮やかに物語の場面を彩る。最近邦訳が出版された「オドの魔法学校」でもあちこちにこうした場面がちりばめられている。これが淡彩のル・グインとは対照的だ。もちろん両方とも好きな作家であることには変わりがないが。
「ゲド戦記」はジブリが(かなり不満な形だが)映像化したので、今度はどこかがマキリップの作品を映像化しないかなと考えている。しかしジブリの絵には合わないし、ピクサー等の3DCGは論外だ。また、特殊効果を使った実写もしらけそうだ。日本や米国のスタジオでは難しいのかもしれない。むしろヨーロッパの絵作りの方が向いていそうな気はする。
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