国債格下げの悪循環
今日もまた、ハンガリー,ポルトガルの国債を「投機的」に引き下げた格付け会社がある。格付け会社が自分たちの信用を維持して生き残るための、格下げ競争が始まりかけているのでなければよいのだが。
債権の格付けが下がれば資産評価価値が下がるので、資産減少によって金融機関の貸し出し能力が低下する。これは上記のように投機ファンドが売り買いの間をつなぐ短期融資を受けにくくなることにつながる。そうなれば投機ファンドは収益を上げにくくなり、収益低下は投機ファンドからの資金引き上げにつながりかねない。これはさらに国債などの債権類の値下がりを呼び、それはさらに格下げにつながる。
これは是非とも食い止めなければならないが、従来はその原資を国家資金に頼ってきた。しかし、国家財政の悪化で各国とも財政出動の余裕を無くしている。それがまた国債の格付けを引き下げ、こうして悪循環が続く。
別記事で書いたことがあるが、現在の金融経済システムの基本的なアルゴリズムは紀元前に始まり、それは今もほとんど変わっていない。ただ、通信や交通の発達により取引の規模と速度が大きくなっただけだ。このため、19世紀まではパニックの拡大を抑制していた距離と時間のずれが効果を失ってしまった。これが昨今の世界的大混乱の原因だ。
従って、それを補うメカニズムを世界経済に組み入れる必要があるのだが、投機経済関係者はそのようなメカニズムは自分たちが利益を上げる妨げになると思い込んでいるようだ。そして、投機経済が金融経済の中核であると思い込んでいる経済政治家達の腰も重い。
このままでは現在の混乱は拡大するばかりで、抜け出す目処が立たない。日本の失われた10年と言われるが、この世界規模の混乱は失われた30年にもなりかねない。従来の景気制御システムはもはや効力を失っている。従って、投機を中心とした金融経済に依存する、現代経済のあり方の根幹から見直すべきだと思うのだが。
追記(2011/12/18);
今日もまたベルギー国債格付け引き下げの報道があった。英独仏に対しても格下げの可能性があると格付け会社が脅しをかけている様だ。
しかし国債など債券の格付けの引き下げは、銀行などの資産評価額を減少させ、融資能力を減少させる。つまり金融引き締めと同じ効果を及ぼすのだ。このため景気がさらに収縮し税収を減少させることにつながりかねない。これはさらに国家財政の悪化として、格付け会社による評価引き下げにつながる可能性がある。
つまり、格下げは景気収縮スパイラルの原因の一つとなるのだ。格付け会社は自分たちの収益しか念頭にないだろう。その為には他に先んじて格付けの引き下げを行い、厳格な評価を行うとの評判を維持しなければならない。
そして、止めどもなく収縮スパイラルは拡大してゆく。これは日本のバブル崩壊後のデフレスパイラルと同じ構図だ。国際会計基準が格付けによる資産評価替えの強制を続ける限りこれは続くだろう。失われた30年にならなければよいのだが。
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