地震予知と予測
この数日、地震の予知と予測に関する話題がネットを賑わせているようだ。
その1は、ゲラー東大教授がネイチュアーに発表したレポートで、地震予知は不可能だから東海地震監視プロジェクトは無意味だと主張しているとされる件だ。だが私の認識では、このプロジェクトは地震予知のためのものではなく、東海地震が起きた後に予知につながる前兆があったかどうかを調べるものだった。しかし、プロジェクトが大規模になるにつれて国家予算による支援が必要になり、多額の予算支出を合理化するために、「差し迫った危険があると考えられる場合に警報を出す」という口実を持ち出したように記憶している。
それが10年ほど前から様々な政治利権がらみで、しだいに「予測」が前面に出て一人歩きを始めているというのが私の認識だ。だから本来予知の役には立たないというのは、関係する研究者にとってはわかりきったことのはずだ。また、「現在のところ、信頼できる地震予知法は存在しない」というのが地震学会の公式見解でもある。
その2は、京都大防災研究所の遠田准教授がGPS(海底測位点?)の移動から、海溝東側の太平洋プレートに引っ張る力が加わっているので、近くM8級の地震が起き大津波も発生すると主張している件だ。これもプレートの伸びから予測しているようだが、正しいと言えるのかどうかはわからない。特に昭和三陸地震を前例としてあげているようだが、この地震のメカニズムについての確度が高いとは思えない。だから、早ければ一ヶ月後にもと言う主張は頷けない。
今回の地震の元になったプレートへの圧力は、上側の北米プレートと下側の太平洋プレートの両方を圧縮していた(歪みはその弾性変形によって力を蓄えることができる)ので、地震後には当然両方が伸びたはずだ。この太平洋プレートが伸びているので引っ張りの力が加わっていると言うのが、この圧縮からの復元分を除いているのかどうかが重要なポイントになるだろう。記事ではこの点がわからないのが残念だ。
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