政治主導の誤り
民主党幹部から、「政治主導が軽率だった」と反省の声が聞かれるという。
確かに民主党が提唱した「政治主導」は欠陥だらけだった。最大の誤りは、自民党政権時代にメディアが煽り立てた「官僚叩き」の尻馬に乗って、「官僚排除」をその中心にすえたことだ。もっとも「官僚排除」の理由には、「政治利権」を独占しようとした小沢氏の意向も強く働いたと思われるが。
しかし相当する力量を持つ党機関がないままに、日本における最大にして最強の情報収集・分析コンサルタント組織とも言える官僚機構を排除したことによって、政権の分析・企画能力不足があっさりと露呈してしまった。政権の迷走ぶりの原因はここにあると断言できる。さらに、党政策に忠実でない官僚は降格するなどとの脅しをかけたことにより、多くの官僚は民主党に対し不信感を持ち、自発的に業務に取り組む熱意を失ってしまった。いわゆるモラルハザードだ。
この結果、政権運営に必要な情報も具体的に請求しない限り報告されず、政権幹部が不十分な情報しかないままに不用意な発言を繰り返さざるを得なくなった。これが閣僚のちぐはぐ発言の原因となり、さらに閣僚間の不信感をも生み出していると思われる。
この状況を修復するには、官僚に対し率直に謝罪し、彼らの意見に真摯に耳を傾けるほかはない。もちろん最終決定は、閣僚自身が自分の責任において行わねばならない。決定が官僚の具申とは異なるとしても、その理由をきちんと説明すれば理解は得られる。国民と官僚の双方を納得させる説明をする、それが政治家の力量というものだ。
ただ関係を修復し、かつ政治家としての主導性を確立するのは、今となっては非常に困難だ。また、無責任なメディアや国民の公約違反との非難も受けるだろう。しかしそれに耐えて行く覚悟と信念がなければ、本来あるべき姿の「政治主導」を確立することは不可能だ。
同じ事は自民党にも言える。現在の政治の混乱は自民党政治家の力量不足と慢心から始まった。現状では、自民党も官僚に対する十分な対話とコントロールができるとは思えない。自民党にとっても対岸の火事ではないのだ。
教訓;「官僚機構は、政府が無料で使える最強のコンサルタントだ。これを活用すべし。」
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