町村合併が過疎化を推進する
最近各国の小さな街や村とそこでの生活ぶりを紹介する番組が多い。番組中ではそのような小さな町や村がどのように運営しているかも紹介されている。そこで目につくのは、小さいことの良さを生かした地方自治のあり方だ。これは中世の封建時代、そして近世の絶対王政時代を通じて維持されてきた伝統に基づくものだが、国が無理矢理に町村合併を推し進め、自治単位を巨大化させた日本とは大きく異なっている。
日本の場合、中央政府と地方政府の機能分離という考え方があまりなく、地方自治体の役割は国の下請けのように見える。このため、各地方の個性は無視され、国の基準に従って業務を行う事が期待されている。また、各自治体も自分たちの業務の指針が国によって明示され、詳細にわたって指示があることを期待している。この結果、国は特性の異なる地域にも対応できる指針や指示の作成に追われ、業務が多くなっている。また、各地域の要望に共通して対応するために、逆に各地域の特性や個性を無視した画一的なやり方にならざるを得ない。これは国家の管理コストを抑える為にも必要だからだ。これが市町村合併が国家主導で強引に進められた理由でもある。自治体数が少ない方が管理コストが下がるからだ。この点が細部は各地域の自主性に任せ、国が口出しをしない欧米の地方自治のあり方と大きく異なっている。
よく言われることに、「日本の企業はボトムアップの経営で発展してきた」と言うことがある、しかし地方自治に関してはトップダウン志向が強かったと見るのが正しそうだ。おそらく明治政府が、江戸時代から続いた村役人や町役人を中心とした小共同体による自治を廃止し、中央集権化した事と関連しているのだろう。
いずれにしても、各地域の特性に細かく応じられる柔軟な行政を行うのは、行政単位が小さければ小さいほど容易になる。その点では小さな自治単位から郡、県と国家まで樹状に階層を重ねてゆく欧米の方式が優れている。欧米では、人口数百人の村落でも独立した自治単位であり、それがいくつか集まって村群を作り単独ではできない事業を行う。村群がさらに集まり郡を構成し、さらに県や州へと自治単位の階層を形成し、より大規模で共通する事業を行う。
この結果、各自治体の行政組織は小規模で済むし、最小単位では首長や議会議員は地域の特性を熟知しているので、柔軟な対応ができる。またそれぞれの業務が少ないので、首長や議員が本業のかたわら無報酬で公務を行っている例も多い。これら全てが、低コストで柔軟な対応ができる行政を支えているのだ。
大合併で地方自治体を巨大化させてしまった日本。地方行政がますます硬直化し、これが地方の過疎化を加速しているように見えるのが残念だ。
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