先進国のデフレ、途上国のインフレ
デフレに悩む先進国に対し、中国をはじめとする途上国のインフレが少しずつ加速し始めているようだ。
かつて、戦後経済からの脱却を目指した池田勇人首相の「所得倍増計画」によって、昭和36年から昭和46年のドルショック不況までの10年間、日本は高度成長にわいた。高度成長は、さらにその後に続いた1次(昭和48年)・2次(昭和53年)のオイルショックで完全に終焉を遂げることになるのだが、その間の日本は所得増加と競い合うような物価上昇に悩まされることにもなった。このため現金収入の伸びが商工業ほどではなかった農漁村と都市部と収入格差が非常に大きくなり、出稼ぎや集団就職によって労働力を必要とした都市部への人口流入が著しくなった。また、自民党の基盤である農家の不満を和らげるため、毎年のように政府購入米価の引き上げが行われ、これは政府補助金がなければやっていけない現在の農業体質につながった。
現在の途上国を見ると、ちょうど日本の高度成長が始まった時期に非常に似ている。都市部の現金収入が増えるのに伴って物価が上昇するが、農村部では収入が伸びず生活の格差が広がっている。各国の政府はまもなく、農村部の不満をどう抑えるかに追われることになるだろう。しかし農村部に対する経済援助は、インフレをさらに加速する危険性を秘めている。舵取りが難しいところだ。
さらに言えば、途上前国(経済成長の初期段階に達していない国)は途上国のインフレに伴う世界的な物価上昇によって生活困窮度が高まるだろう。これを放置すれば世界的な政治的不安定度が増大するだろう。途上前国に対する援助が必要だが、これまでのような金や食料を恵んでやる式の援助では、これらの国の民衆の不満は高まるばかりだろう。どのような手助けを行うのが良いのかについて、根本的な見直しが必要だ。
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