教員資格に修士号?
文科省が教員資格に修士号を加えることを検討するという。教員の質を向上させるためだと言う。
私はこの報道を見てあきれ果てた。なぜならば教員の質が低下している(何を持っての低下かがそもそも定義されていない)対策としては、費用がかかるばかりで効果がほとんど無いと思えるからだ。教員の現場での対応能力が低下していると言われるのは、養成校での教育が不足と言うよりは、現場での実践教育(民間企業で言うところのOJT[オン・ジョブ・トレーニング])が機能していないからだ。
私の耳に入る限りでは、今の教員は報告書や申請書の作成などの事務作業の増加、これを補助する事務職員の削減などによって、同僚の手助けや指導に割く時間と精神的な余裕がないようだ。これでは経験豊かな先輩が後輩の相談に乗り、悩みの相談に乗ったり指導したりするという、現場でのフォローアップができない。これが現在の教員養成での最大の欠陥だと思う。
さらに、教員資格に修士号を要求すれば、経済的に余裕がある家庭の子女以外は教員資格の取得が難しくなる。これでは、有能な人材を集める上での障害にしかならない。むしろ資格取得は容易にして、OJTでの選別と能力向上に努めるべきだ。
そのためには、採用当初は「準教員」あるいは「補助教員」として扱い、教育委員会と学校に指導の義務を負わせるべきだ。具体的には、各現場に経験豊かな教員や元教員を配置して指導に当たらせる方が良い。実際、海外では学歴資格は設けず、面接で「補助教員」あるいは「臨時教員」として採用し、実地で経験をさせながら通信教育で正式の教員資格が取得できる制度を持つ国もあるようだ。
優秀な教員を育成したければ、養成校での理論教育よりも現場でのOJTを充実するべし、と言うのが私の考えだ。
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