羽田ハブ化論の原因
羽田空港を国際ハブ空港にするとの大臣発言に、うろたえている人が多いようだが何を今頃という感がする。
このところ続いてきた羽田空港の拡張は、元はと言えば成田空港の拡張ができないからだ。成田空港は以前から飽和状態になっているが、周辺の空港反対派との協定などのため拡張は事実上不可能だ(第二滑走路すら満足に造れない)。この為、成田は計画から50年たった今も完成せず、国際ハブ空港にと言う構想は完全に頓挫した。その結果、増加する需要に対し羽田を再び国際空港として活用せざるを得なくなったという事だ。横田基地の民間転用構想も、現在の羽田からさらに拡張しても離発着枠の拡大は空域が混雑するので困難だろうという見方があるためだ。
(横田基地は、米軍が米本土向けの定期便を運行させており、滑走路が一本ながら長距離便も発着できる。また、東京西部の交通の要衝である立川のすぐ西にあるため、関東西部の住人には利便性がよい。弱点は伊丹同様騒音問題。)
成田の拡張が不可能なため、羽田の拡張は二十年来続けられて今や日本国内最大の空港となっている。成田の転落と羽田の国際ハブ化は事実上の既定路線になっていたはずだ(第四滑走路の建設はその準備だと思っていた)。それが何を今頃になって驚くのかと思う理由だ。そしてこれは、不都合なことには目を閉ざし、都合の良いことだけを見るという近頃の日本人に共通(政治家も、財界人も、またマスメディアや庶民もだ)する習性の「賜物」だろう。
追記1(2009/10/14);千葉県は成田が見捨てられると思っているようだが、成田は成田として存続し続ける必要がある。それは、羽田が拡張されたとは言え、成田無しには航空需要をまかないきれないのは明白だからだ。東京が一空港でよいと言うことには決してならない。
たとえばニューヨークはJFK以外にニューアークとラガーディアの二空港があり、ニューアークはJFKとともに国際ハブ空港級の大きさと発着数がある。(ラガーディアは小さいがカナダなどへの近距離国際便は発着している。また、JFKとニューアーク間は車で一時間ほどで移動できる。つまり三空港が連携してハブとして機能している。)羽田の拡張余地にも限界が見えてきている今、今後も成田が拡張できないのであれば第三国際空港をと言う機運は必ずでるだろう。
追記2(2009/10/14);成田が拡張できないことについては、反対派を非難するつもりは全くない。ベトナム反戦とリンクさせたためこじれてしまったが、静かな生活を守りたい、先祖伝来の土地を取り上げられるのは嫌だと思うのは人間として当然だ。国が、取り決めた協定は尊重しなければならないのも当然だ。
もし両者が協定の消滅に合意することがあるとしても、それは何十年も先のことだろう。東京への一極集中が進み、いわゆる東京圏の拡大が続けば、その頃には成田空港周辺は住宅で埋め尽くされて、拡張余地は全くなくなっているだろう。羽田の拡張が限界に達した後、どうするのかはまさに国家百年の計といえる。
追記(2009/11/18);
地域ハブ空港を狙うアジアの新空港と日本の空港を比較できるJAXAの記事がある。これを見れば、成田空港が東アジアのハブ空港たる資格がないことが一目瞭然だ。大きさ、都市中心部へのアクセス、どの面でも成田は格段に劣る。成田にこだわっていれば、東京が東アジアの中核都市としての地位を失い、ひいては日本が東アジアの中核国としての地位を失いかねないことが、これを見ればはっきりと分かるはずだ。
アジアの新空港を宇宙から見る;http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2009/tp091118.html
成田と羽田、首都圏の2大空港;http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2009/tp091111.html
海上空港と古墳のある風景:大阪;http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2006/img/tp061116_01j.jpg
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