都賀川増水事故
増水で子供たちが流された事故があった都賀川は、私もよく知っている。
神戸のこのあたり、芦屋市から神戸市中央区にかけては市街地の幅が2kmほどしかなく、山から出た川は100m程の標高差を一気に流れ下る。どの川も普段は水量が少なく、川底を階段状にして流れを弱めてあるため、子供たちの水遊びに好適だ。しかし一旦増水すると滝も同然の激流になる。何年も前になるが、都賀川の上流で増水状態の流れをを見た事がある。水深は2mはなかったかと思うが、流速は優に20m/秒を超えており、ここに落ちれば2分とかからずに海まで流されると思ったほどだ。
今回は保水力のない山麓の住宅地の狭い範囲で非常に激しく降り、一気に川に流れ込んだもののようだ。そして、川では水深が増すにつれ流速が増えるので、先端で累積して鉄砲水になったのだろう。また、増水につれて加速する事を考え合わせると、上流で増水し始めてから事故が起きた場所に到達するまでは何分もかからなかったことだろう。
今回の事故の原因として、増水警報装置がなかった事をあげる専門家もいる。しかし、今回のような市街地の急流では、増水を検知してからの警報では間に合わない。むしろ、雨が降る前に警報を出す必要があるのだ。それをどのように行うべきなのか。
2kmほど離れた私の家のあたりでも、その時刻に30分ほど強い雨が降ったが、非常に激しいというほどではなかった。夏の雷雨では数百mも離れると降り方が全く違うことはざらにある。そのようなむらのある降り方を正確に捕捉して、的確な警報を出すには密度の高い観測網が必要だ。それを達成するために分単位で計測できる雨量計を配置するのか、100m以下の分解能で監視できる降雨観測レーダーを配置するのか。いずれにしても、技術的な問題とともに、費用の問題が立ちふさがるだろう。
今はまだ、雨の気配があれば川から上がるということを徹底することの方が、市街地の急流では現実的だ。
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