手ブレ防止機構付きのデジタルカメラが増えてきている。それはそれで良いことかも知れないが、手振れの原因を解消する努力はされていないように見える。
デジタルカメラが手振れしやすい主な原因はその人間工学的に欠陥がある構造にある。
銀塩カメラでは光学ファインダーを使うため、カメラを顔面に密着させ、両肘を体につけて構えることによってカメラのブレが防止できる。これはどんなカメラの手引き書にも書いてあった事だ。
これに対して、デジタルカメラでは小型液晶をファインダーの代わりに使うので、両手を伸ばして構える事になる。これでは手振れして当然である。さらにデジタルカメラは軽量でシャッターボタンが小型で押しにくい物が多いのでますますブレ易くなる。つまりデジタルカメラがブレ易いのは、設計上の欠陥が原因である。
これを解決するには、光学ファインダーを付け、しっかり構えられるようにすれば良いのだが、開発陣は複雑化してコストを上げることの方に熱心なようだ。技術者にとっては、新しい機構を開発する方が、従来からある技術を上手に活用するよりも成果として認められやすく、成果主義のもとでは点数を稼ぎやすいのは確かだが。
日本の製造会社では技術のことが分からない、労務・財務系出身者が上層部を独占する傾向が強いので、成果主義はともすれば、無駄だが見た目は派手で素人受けしやすい技術開発を高く評価する傾向がある。このため、最近の技術者は見た目が派手で、技術面に暗い社内上層部にアピールしやすい方向に走る傾向が強いように思う。これも、言ってみれば成果主義の弊害だ。
自動ブレ補正機構は、振動が問題になる移動体からの撮影には威力を発揮するだろう。そしてそのような用途向けには高く評価されるべきだろうが、手持ち撮影用のデジタルカメラにはそんな物はなくても済む。本質的な解決策として、従来からある光学ファインダーを付ける発想は全く評価されない。商品設計者としては後者の方が本質的解決を図ろうとしたという点で、有能であるにもかかわらずである。それが現在の日本の成果主義である。
この様に、最近の日本の技術開発は本質的な解決を図ろうとせず、制御機構などを付け加える事で問題を回避しようとする傾向が強い。回転ドアに挟まれて子供が死亡した事故にもそれは言える。新技術の開発はそれはそれで良いことではあるが、どうも無駄な使い方をしているように思う。成果主義が強化されるにつれて、この傾向はさらに強まっていくだろう。
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