正論は必ずしも正しからず
「正論」が常に正しいとは限らない。 状況によっては「正論」が「誤論」になってしまうことは少なくない。
日本ではやっと接種が始まってばかりのコロナワクチンについてもそれが言える。 ワクチン接種に関して各国の状況を見ると、2回ずつ確実に接種を進めている国と、ともかく一回の接種をできる限り多くの人に済ませようと言う国とに分かれている。 しかし流行の制圧という観点で両者を比較すると、ともかく一回の国の方が成果を上げているように見える。
先日のニュースで司会者がともかく一回で進める方が良いのではと言う意見を述べると、コメンテーター(確か弁護士だったと思う)が免疫が確実に出来るには2回接種が必要なのだからそれは駄目ですよと反対していた。 確かにそれは「正論」ではあるが、それは個人についてみれば正しいが集団全体の感染を抑えるという観点では正しくない。
なぜならば、集団全体の感染を考えるには「実効再生産性」が重要で、これが集団全体での平均が1.00未満にならなければ新規感染は減少しない。 その観点から言えば、1回だけの接種で感染阻止率が50%でも多数が接種を受ければ新規感染者数を減少させることが出来るからだ。 つまり感染阻止効果は次の式のようになるからだ。
接種後の実効再生産性=接種前の実効再生産性×(1-接種率)×(1-感染防止率)
つまり、事務の繁雑さで2回接種の速度が上げられないのであれば、ともかく迅速に一回の接種を行き渡らせてしまおうと言う考えも成立するのだ。 2回接種でも感染防止率が1.00にならないので、むしろ一回を大勢に接種する方が集団の実効再生産性を抑える点で有利になる条件もありうる。 とにかく一回派が好成績を上げているのは、事務手続きなどが簡単で接種のスピードが上げられたと言う事だろう。
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