トマトの消費量
テレビの番組でトマトの消費量を話題にして、日本の消費量はヨーロッパの1/10にすぎないからもっと食べるようにすべきと主張していた。 「もっと食べよう」には異議も無いが、消費量が少ない背景の分析は不十分だった。
日本ではトマトはほとんど生食用で、品種改良も酸味を抑え甘みを増やす事が追求されている。 しかしこれではトマトの消費量を増やすにも限度がある。
消費量が多い国を見ると、トマトのペーストやピューレを基本調味料として使う国が多い。 日本のだしのような使い方だ。 このため、調理用のトマトは適当な酸味が有りうまみ成分が多いものが選ばれ利用されている。 トマトが南米からヨーロッパに持ち込まれた当初は、悪魔の果物で猛毒があると信じられて敬遠されたが、料理に使われ始めてからはうまみ成分が料理の味を著しく向上させた為一気に普及したそうだ。 そして、夏しか収穫できないトマトを一年中利用する為、乾燥したりペーストにする保存法が考え出された。
これに対して日本では、ポルトガル人やオランダ人が室町時代以降に日本に持ち込んだと思われるが、すでに同じ利用法の「出汁」が安価に普及し始めていたため高価なトマトは入り込む余地が無かったと思われる。
そのためトマトは日本食に入り込めずに終わり、日本人が馴染むのは昭和以降の生食の普及によってになった。 そして日本ではトマトは生食するものという固定観念ができあがり、品種改良も調理用にうまみ成分の多いものを作る努力はされず、生食用の酸味が少なく甘みが強いいわゆる「フルーツトマト」の開発競争ばかりがされるようになったのだろう。
しかし生食だけでは当然のことだが消費量がめざましく伸びることは無い。 消費量を増やす為には、日本食に合う調理用トマトとそれを使った家庭料理の開発が必要だ。
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