三つ編み
突然疑問がわくことがある。 今回のそれは、世界には庶民女性の一般的な髪型として三つ編みの伝統が有る地域と、無い地域があるのでは無いかと言うことだ。
たとえば、ヨーロッパではアイルランドや北欧、そしてロシアまで民族衣装で盛装した女性の写真を見ると老若を問わず三つ編みがほとんどだ。 これは中央アジアを通って中国、そして朝鮮半島さらにシベリアをとおして南北アメリカにまで続いている。
これに対して、日本では江戸時代以前の絵を見る限りでは三つ編みの伝統は無い。 日本で三つ編みが広まったのは、恐らく明治以降に各地で設立されたキリスト教系の女子学校で標準の髪型とされ、それが西洋風でモダンな髪型として若い女性の間で流行したのだろう。 今でも日本では若い女性以外が三つ編みをするのはおかしいと言われるのはその為だろう。
そして日本とその周辺を見ると、北海道から本土、琉球を通って台湾の先住民族には三つ編みの伝統は無い。 もっとも漢民族にしても、明以前の時代には中国南部では一般的では無く、北方民族の支配を受けている間に広まったのではないかと思われる。 そして中国南部の少数民族の民族衣装姿にも三つ編みは見られない。
これはさらに南のインドシナ半島のベトナム、ラオス、カンボジアでも同様で、伝統衣装姿の写真では三つ編みは見られない。 そして同様にタイやビルマ、インド亜大陸東部でも三つ編みが見られない。 ただし、現代のインド女性には三つ編みが見られるが、ヒンドゥー教寺院の装飾には三つ編みの女性が見られないので、元々は無かったが中央アジアとの交流によって伝わったものかもしれない。
また、さらに南のマレー系の地域や東のオセアニア、メラネシア、オーストラリアにも見られないし、古代エジプトやさらに南のアフリカ全般にも無かったようだ。 また、アラブや北アフリカの女性は髪を出さないので分からないが、恐らく三つ編みの伝統は無いのだろう。
こうしてみると、三つ編みは北の寒冷な気候の地域に多く、南の温暖に地域には少ないようだ。 また髷にする際にも、北方では三つ編みにした髪をまとめて髷にするのに対し、南方では束ねた髪をねじってまとめて髷にするようだ。 だが、なぜそのような違いが生じたのかについては手がかりが無い。
さらに言えば、南北アメリカ全域で三つ編みの伝統があると言うことは、古代にシベリアから陸橋を伝って米大陸に渡った人々にすでに三つ編みの伝統があった事を示しているのだろう。
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