化学工場の爆発事故
ワールドカップ敗退のニュースで主要サイトのトップページからは押し出されてしまったが、昨日(2018/07/02)福井県若狭町で化学工場の爆発事故が発生した。
いくつかのメディアの情報からは、反応で使う原料を準備中に爆発が起きた様だ。 写真を見るとオレンジ色のガスが立ち上っている様子が分かる。
このようなオレンジ色のガスと言えば直ちに思いつくのは臭素(Br)か窒素酸化物(NOx)だ。 オレンジ色のガスと言えば北朝鮮のミサイル発射実験の動画で、オレンジ色の排気が立ちこめるのを見た記憶がある人も多いだろう。 あれはロケットのヒドラジン系燃料が濃硝酸と反応して発生する窒素酸化物の色だ。
今回の爆発事故があったのは「プロテインケミカル」という化学会社の工場で、医薬や食品向けのアミノ酸を製造販売しているようだ。 アミノ酸合成工程で事故が起きたとすれば、爆発したのは分子中にアミノ基(ーNH2)を導入する為やアルキル基の炭素を増やしたりするのに使用するジアゾ化合物(R-N=NーR)だろう。 ジアゾ化合物は不安定で熱や衝撃によって爆発することがある。 今回の事故も、反応に使用するために希釈して濃度を調整する作業中に温度制御に失敗して急激な分解が起こり爆発に至った事が考えられる。 写真のオレンジ色のガスはジアゾ化合物の分解によって発生した窒素酸化物の可能性が高いからだ。
ジアゾ化合物は爆発性があると言っても、そのことは化学者や化学技術者には取っては一般常識で、取り扱いには細心の注意が払われるので事故は滅多に無い。 ただ、慣れによって不注意になることはあり得るので、それを防止するためのKYと作業手順書の厳守は不可欠だ。
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