クラシック音楽での偽作
日本のクラシック界では、最近シャドウライターを使った偽作が暴露され作曲者と称していた人物が事実上音楽界から追放される事件があった。
しかしクラシック音楽の世界では、他人の作として自作を発表する例が少なくない。最も多いのは、近代・現代の作曲家がいろいろな理由からルネッサンスやバロックの忘れられた作曲家の名を借りるケースだ。中にはパガニーニが自作を自演で発表したが、批評家たちが「演奏は素晴らしいが曲はいただけない」と書き立てたのに腹を立て、忘れられていたルネッサンスやバロックの作曲家の曲だとして発表したところ絶賛されたと言う例もある。付け加えると彼は、曲が有名になった後に「実は自分の作曲だ」と公表し、批評家の鼻を明かして溜飲を下げたそうだ。
面白いことに、そのような偽作曲には名曲と言われるものがいくつもある。たとえば、有名な「アルビノーニのアダージオ」はアルビノーニの研究家が、アルビノーニが忘れ去られているのを残念に思い、自作を「アルビノーニの断片による編曲」として発表したものとされているし、「カッチーニのアヴェマリア」はロシア人のギター・リュートの演奏家が自作をルネッサンスのイタリア人作曲家カッチーニのものだと称したとされている。
もっとも、私はカッチーニのアヴェマリアはてっきり近代以降の曲と思い込んでいたので、カッチーニがルネッサンスの作曲家と知って驚いたのだが。理由は、ルネッサンス・バロック期のアヴェマリアというと、フレーズが短いアルカデルトやヴィットリアの物のイメージしかなかったからだろう。
上記の2曲はどちらもクラッシックの名曲とされ愛好者が多いが、好評を得られなかったものはおそらく数知れずあるだろう。
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