小さな花の細部を見るために等倍以上の拡大撮影の方法を探しているうちに面白いカメラを見つけた。
最初は等倍以上の撮影が可能なマクロレンズや中間リングを考えていたのだが、三脚が使えず手持ちになることも多い野外の撮影では、重量が大きい一眼レフはハンドリングが難しそうに思えるので他の方法も検討する事にした。次に検討したのは写真撮影が可能なポータブルデジタル顕微鏡だが、これは確かに等倍以上の高倍率の撮影が可能だが、手動ピント合わせが難しそうでこれも保留とした。
これらを比較しているうちに行き会ったのが「顕微鏡モード」を持つOlympus Stylus TG-3 Toughだ。調べて見ると「顕微鏡モード」とはズームの全領域で使えるマクロ機能で、デジタル顕微鏡ほどの倍率はないがオートフォーカスも利き、デジタルルーペぐらいには使えそうで私の目的には十分間に合いそうに思えた。難点は同クラスのコンパクトデジタルカメラに比較して価格が高いことだが、耐衝撃性や防塵性そして15mまで使用可能な耐水性などを備えている為と思われる。
なおこの機種はネット情報では後継機種の発表が近いようで、メーカーの公式ショッピングサイトではすでに販売終了になっているが、まだ販売店に流通在庫があるので今しばらくは購入が可能だ。流通在庫がなくなれば、まだ公式販売が続いている兄弟機種の「TG-3 工一郎」のみが購入可能になる。ただこちらは工事記録写真撮影用で、公式書類添付のための機能やソフトウエアなどが付属するためその分価格が高くなっている。
と言うわけで、マクロ主体の持ち歩き用として面白そうなので、ネット通販を利用して購入することにした。
試し撮りした画像サンプルはこちら;Olympus Stylus TG-3 Tough 画像例 |
追記(2015/03/26); 1.外観 届いた商品を取り出してみると、最初に気がつくのは大きさと重さだ。一般的なポケット型コンパクトデジカメに較べると二回りほど大きく、1.5倍ほどに重い。耐衝撃、防塵、防水の性能を売り物にしているだけに、それらの性能を満足するためには大きく重くならざるを得なかったと言うことだろう。電池収納部やコネクターのカバーも、2段のロック式になっている。
デザイン的には、他社の競合機種がスポーティさやカジュアル性を売り物にしているのに対して無骨そのもの。工事記録用として販売されている兄弟機「工一郎」の方が基本型となっているのかもしれない。競合機の派手なデザインでは業務用カメラとしては具合が悪そうだから、無骨さで特徴を出しているのだろう。 |

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2.充電 電池の充電はUSBケーブルを利用して行う。専用のACアダプターが添付されているが、パソコンのUSBからも充電は出来た。ただし、カメラ側のUSBコネクターがAVケーブル用コネクターと兼用するためのの特殊な形状になっているため、通常のマイクロUSBプラグでは接続できない。 |

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左がTG-3のUSBコネクタープラグ。右が一般のマイクロUSBプラグ。 |
3.顕微鏡モード 購入の最大のポイントである「顕微鏡モード」を試してみた。これは、一般のコンパクトデジカメではワイド端でしか使えないマクロモードをズーム全域で使えるようにしたものと考えると良い。4倍のズームの全域で最短撮影距離の1cmで撮影できるので、ポータブルデジタル顕微鏡ほどではないが小さな花を画面一杯に拡大するには十分だ。 |

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液晶ディスプレイの画面を撮影し手見るとこんな感じ。上がワイド端での画像。下が望遠端での画像。(光学ズームのみトリミング無し。非光沢のLCDは表面の凹凸の為、フォーカスがシャープには合わないようだ。) |
早速試し撮りをして見たが、小さな被写体に大きなカメラで狙いをつけるのはやはり難しい。手持ちの場合は、手首をしっかりと固定しなければ構図を決めるのが大変だ。 |

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これは道端に生えていた「ほとけのざ」。これを「顕微鏡モード」で近接撮影すると。 |

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さらに近づいて花弁の一部を拡大すると下の写真のようになる。ズーム全域でマクロが可能であることの威力だろう。いずれの写真もトリミングはしていない。 |

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ここまで拡大しようとすると、手持ちの屋外撮影では構図を決めるのに一苦労する。手首を何かで固定するか、小型の三脚が必要だ。また、風を読む能力も必要になる。 |
4.深度合成機能 拡大鏡クラスの近接撮影になると被写界深度(焦点深度)がごく浅くなるが、TG-3では焦点位置を前後にずらして撮影し、それを合成して一枚の写真にする機能がありこれは便利だ。というのは、オートフォーカスでは望みの位置にピタリと焦点を合わせることが難しいのだが、これを利用すると多少のずれはカバーできるからだ。 |

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これは「深度合成」と言う機能で、上はこれを使わなかった場合、下はこれを利用した場合で、明らかに被写界深度が深くなっている。 |

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同じく深度合成の例。深度合成しなかった上に較べて、行った下では手前の花弁から奥の芯まで鮮明に写っている。
これらの機能は風がなく、手首を支えられるものがある、など条件が良ければ手持ちでも可能だが、ぶれがひどいと画像合成に失敗するので小型の三脚が使えれば使う方が良い。より高い拡大率まで「深度合成」機能が利用できる。 |
これとは別に焦点位置を前後にずらして複数枚撮影する「フォーカスブラケット」機能もあるので、合成機能がある画像処理ソフトを使ってPC上で合成することも出来る。「深度合成」ではフォーカスのシフト量と撮影枚数は変更できず、1枚目と合成語の画像だけが保存されるが、「フォーカスブラケット」ではフォーカスのシフト量と撮影枚数を選択することが出来る。 |

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「深度合成」機能は、このような奥行きがある被写体を撮影する際にも利用できる。 この例では、上が「深度合成」無しで下が「深度合成」有り。
5.オートフォーカスロック機能 高倍率のマクロ撮影では、オートフォーカスでは狙った位置にピントが合いにくいため、フォーカスを固定してカメラを前後に移動して焦点を合わせることも少なくない。本機には、この目的のためにオートフォーカスを止める「オートフォーカスロッック(AFL)」という機能がある。オートフォーカスを止めた状態では、手動で焦点を移動させることが可能なのでオートで焦点が合いにくい場合の「マニュアルフォーカス」機能としても利用できる。ただし「AFL」が使えるのは「顕微鏡モード」の他、二種類の水中撮影用モードに限られる。
この機能は「ロック」、「解除」ともボタンひとつのワンタッチで可能。
6.照明装置 マクロ撮影時には難点がひとつある。それは、レンズが突き出さないため最短撮影距離近くまでカメラを近づけると、ボディーが光を遮ってしまうことだ。このため条件が良い横照明がある場合以外は被写体にカメラの影が落ちてしまいがちだ。この点ではレンズが突き出すタイプの方が、光源配置角のマージンが広く有利だ。
影対策として、正面光で撮影できる「LEDライトガイド LG-1」がオプションで用意されている。これはオートフォーカス用補助光源の光を、レンズ周辺に導いてリングライトとして利用するもの。ストロボと違い光量が少ないので至近距離でしか使えないが、これが使えない距離では影が落ちる可能性が減るので外部照明を使えば良いと言う考え方だろう。
特殊な照明効果を望まない場合にはこれが効果を発揮する場面は多そうで、高倍率のマクロ撮影が好きな人には必需品になるだろう。簡単な構造の割には価格が高いが、購入を考えている。
参考情報; リコーの競合製品WGシリーズは、マクロ時の照明用にレンズを取り巻いて6個の白色LEDが取り付けられている。LEDが多い分光量が多いので有効距離は長いだろう。
防水性能や耐衝撃性も似たり寄ったりで価格帯も同じなので、接写時にズームが使える範囲が狭い(ワイド端から中間まで)、深度合成機能が無いなどのマクロ機能の差があるが、いかにもアウトドアスポーツ用という派手な外観がいやでなければこちらも検討対象になる。
7.GPS、コンパス、高度/深度表示 私には必要が無いが、アクションカメラのお約束の各種の機能もある。
GPSも試してみたが、市街地で使って見ると数十m~二百mの範囲でずれる。他社のGPS内蔵カメラでも同様だが、グーグルマップなどに投稿する場合は、緯度経度情報を手作業で修正する必要がありそうだ。
8.シーンモード デジカメではお約束のシーンモードは本機にもある。私はシーンモードはほとんど使わないが、簡単に試してみたところでは、料理モードなどのいくつかのモードでは色彩が強調されてやや不自然な色合いになるようだ。
9.その他気づいたこと 電源を入れると常にオートフォーカスが働いているようで、シャッターボタンを半押ししなくても向けた方向で勝手に焦点が合う。電池消耗の点では不利だがこれを止める方法はまだ見つけていない。
追記(2015/04/03); ユティリティソフトの OLYMPUS VIEWER 3 はSMSへのアップロード機能はあるがいくつかの疑問がある。
1.USBケーブルを介してのデーター転送速度が遅い。キャノンの同じようなユティリティと比較すると、10倍近い時間がかかる。
2.カメラ内のデータを整理する機能が無いので、エクスプローラーでカードにアクセスして削除するしかない。転送時にカメラ内のデータを削除する機能はあるが、カメラ内にデータを残しておいて利用し、後に削除したいこともあるのにこれは不思議なことだ。
3.Wi-Fi経由でタブレットやスマートフォンからカメラを制御する機能はあるが(機種専用ソフトは必要)、USBケーブル経由で給電しながらカメラを制御する機能は無い。カメラ単独の場合はUSB経由でACアダプターから給電できるので、これも不思議だ。 離れた場所から長時間のモニターを行いたい動物写真や科学研究における経過記録など、あるいはモニターしながらのタイムラプス撮影には、電力消費が大きいWi-Fiより都合が良いはずだ。 |
 | 追記(2015/04/08); 背景が明るい場合にひどくかぶる事がある。レンズ前のプロテクターの汚れかと思って丁寧に拭いてみたが良くならなかった。
散歩の途中で見かけた古風な門と桜の老木。曇り空からの光でカブリが出てしまった。
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追記(2015/04/12); 色調をナチュラルに設定していると、コンパクトデジカメとしては比較的落ち着いた色調なのだが、緋赤系統の色はやや派手になる。
上がTG-3の画像。 撮影モード;プログラム ピクチャーモード;ナチュラル ホワイトバランス;オート 評価;肉眼に較べてかなり青味鮮明
下はEOS6Dの画像。 撮影モード;絞り優先 ピクチャースタイル;ノーマル ホワイトバランス;晴天 評価;肉眼に較べてやや黄味暗味 |  |
追記(2015/04/22); 2015/04/21に後継機種TG-4が発表された。TG-4での最大の改良点はRAW形式の保存が出来るようになったことのようだ。RAW形式の色分解能はWebサイトの資料では明らかにされていないが、非圧縮で保存できることを歓迎する人も多いだろう。
その他、顕微鏡モードでの撮影可能範囲の遠方側の拡大、シーンモードの種類の増加、水中モードの独立などの細かな改良もある。 |

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追記(2015/11/11); 小菊に花粉を食べに来た花虻(恐らく「ホソヒラタアブ」)。一般のデジカメのマクロモードではズームが使えないものが多いが、至近距離(0cm)でも4倍までの望遠ズームが使えるこのカメラは小さな昆虫の撮影には最適だ。 |
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