女性管理職が増えない理由
欧米諸国から日本の大手企業で女性管理職が少ないと指摘され、女性蔑視が残っている証拠だとも言われているようだ。それを受けて安倍政権は女性活用を推進するとしている。しかしそれを良く聞いてみると、女性の活用とは管理職を増やす事よりも、安価な労働資源としてしか考えていない様に見える。
そもそも、日本と欧米では女性が高い地位に就くことに対する伝統的な違いがある。西欧では貴族階級の女性が様々な公職に就いたり、女王などの地位について政治的権力をふるう事については長い伝統がある。これはまた、貴族女性は家政婦や育児係を始めとする大勢の使用人を使い、自分では家事や育児をしないという生活スタイルに支えられていた。現在西欧で高い地位に就いている女性の多くは、このような貴族やその地位と生活スタイルを引き継いだ富裕階級に属している。このどちらも、西欧式貴族制度が根付かなかった日本には無い伝統だ。
このような西欧の伝統に比較すると、なぜ日本では高い社会的地位に女性が少ないのかは理解できる。日本では中上級管理職(幹部)に対する給与が低く、共働きであってもフルタイムの家政婦(夫)やベビーシッターを雇えるほどの報酬がない。これが女性が上級職に昇進することを妨げている最大の理由だ。
かつて長時間労働で会社に滅私奉公する男達が「企業戦士」として称揚された。しかし今、企業は当時と同様に滅私奉公する者を幹部社員として求めている。男でも女でも、プライベートな生活を捨てて滅私奉公する者が称揚されるのは今も昔と変わらない。つまり、家事を託す家政婦(夫)を雇えずに長時間労働を強いられる幹部職員が多いのだ。その分、社会のインフラとして長時間子供の世話を安価にしてくれるところが必要になる。上級職を目指す者には男女の区別無く、フルタイムの家政婦を雇えるだけの給与を払えば、公設のインフラとしての保育園は必要が無くなるのだ。このようなインフラ整備の方向性も考えてみるべきだ。
最後に、女性上級職が増えない理由は「私らしく生きる」、あるいは「私らしい生き方を見つける」気風が女性に強いことが上げられる。これは、企業戦士になることを拒否して、余暇に自分の趣味や好きな生活スタイルを楽しむという点にある。そんな者たちも、企業や組織が上級職員に求める滅私奉公と長時間労働のことは知っている。それ故女性労働者の多くが企業や組織の上級職を求めず、自由に使える自分の時間を確保しようとしている。これが上級職や社会的地位を求めない女性が多い理由だ。
この点について、西欧式の解放された女性達は日本の女性達が解放されていない事の証明だと主張する。しかし、企業や組織での高い地位を目指すことが良いことだというのは、男優位の社会の論理をそのまま男女平等の社会に当てはめようとするものだ。つまりこのような社会では、男の論理で考えて男と同じように行動する女性が解放された女性だとされる。キリスト教の、徹底した男優位の論理を物心つく前からすり込まれている西欧人には不思議では無いのだろうが、日本人の私には女性の論理の存在や価値を始めから認めない西欧流は異様な感じがする。
男女が、男女それぞれの肉体的、精神的特性に基づく論理の差異を互いに認識し尊重しあうのが、真に男女平等で双方に束縛がない社会ではないかと考える。硬直したキリスト教的男女平等に固執するのは良くない。
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