人類は2050年を越えられるか?
NHKスペシャル「エネルギーの奔流」を見ていて、人類が2050年を無事に乗り越えられるかが心配になってきた。
指数関数的に増加する人口と、それをさらに上回るエネルギー消費。楽観的な学者や評論家は、石油やガスの採掘可能埋蔵量は年々増加するので心配無いと言うが、その計算の基礎に使っているのは常に現在の消費量だ。そして、生産と消費の増加率の中長期動向は、極めて楽観的な数字が使われている。また、温暖化はほとんど考慮されていない。
温暖化は、再生可能エネルギーでエネルギー需要をまかなえるので原子力は不要だと主張する者たちも居る。しかしその主張を見ると、人工が減少に向かっているあるいはすでに減少し始めている先進国のエネルギー需要だけを計算に入れ、途上国の人口増加と一人あたりのエネルギー消費の増加を無視している。極言すれば自国のことしか考えておらず、不足したとしても高炭酸ガス排出の火力発電や原子力発電による電力を輸入すればよいとも考えている。また、再生可能エネルギープラントの建設に伴う環境破壊も無視している。
一方で再生可能エネルギーによる発電コストが高いため、原子力発電の廃止を決めたドイツでは電力料金が上昇して隣接国の2倍に達したという。このため、ドイツの製造業は電力価格が安い周辺国へ生産を移動し始めており、その結果周辺国の電力需要が高まって石炭火力発電所や原子力発電所の建設計画が目白押しだという。ユーロ安で好景気が続いてきたドイツだが、このままでは生産空洞化による雇用減が表面化するだろう。
このような状況を見ると、途上国で爆発的に増加する電力需要に対処するために続々と建設される火力発電所からの炭酸ガス排出の増加によって温暖化が加速する可能性が高い。また、電力需要ほどには供給が増加しそうもない石油や天然ガス価格の急騰を補うために原子力発電所も多数が建設されるだろう。
しかしそれでも電力需要の急増に追いつくのは困難だろう。家電製品の販売は電力需給のバランスによっては、メーカーの目論見ほどにはマーケットが拡大しない恐れもあるし、石油や天然ガス価格の高騰は電力価格の高騰と合わせて、化学製品価格や今やエネルギーコスト依存度が高くなっている農産物化価格の高騰を招き先進国の生活をも圧迫しかねない。
だからといって、途上国の電力需要増加を規制することは事実上不可能だし、大規模な戦争での大虐殺(億人単位の)によって人口増加を押さえることもできない。それならどうすればよいのか、先進国の一人あたりエネルギー消費を強制的に半減することも手段の一つであるが、現実にはそれは日常生活を破壊してしまうとして受け入れられないだろう。
と言うわけで、エネルギー問題は全くの八方ふさがりで解決の見通しが立たない。このままでは2050年頃にも相当に厳しい状況になるだろう。はたして人類は2050年を越えられるのだろうか。太陽活動の低下によって一時的に緩やかになっている様に見える温暖化の進行と相まって、22世紀が人類衰退の始まる世紀にならなければよいのだが。
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