じわじわ広がり始めたアベノミクスへの疑念
今日(2013/04/05 0:00)からのNHKの「時論」で、山田解説委員がアベノミクスへの疑問を述べていた。
内容は私がこれまでに何回か書いてきたこととほぼ同じで、はたして金融政策だけで景気が回復するのかと言う事を、いくつもの疑問点や問題点を例示して解説していた。特に、給与所得が増加しない中で物価を先行上昇させるのは逆効果ではないかというのは、私の主張と全く同じだ。
今回の春闘では、政府の要求により今まで円高で潤ってきた流通企業を中心に、これまでの蓄えの一部を吐き出す形で賃上げが行われた。しかし今後円安差損が見込まれる流通業界は、今後も賃上げを続けることはできない。今回かろうじて吐き出すだけの蓄えがあった大手製造業についても事情はさして変わらない。依存率が高くなっている海外生産の部品の価格が上昇するので、国内の収益性が低下すると他所されるからだ。結局の所、さらに海外生産比率を高める可能性さえある。
そのような環境においては、金融の長緩和が行われても、国内での設備投資は伸びず、海外生産用の設備逃避資金として海外に持ち出されてしまう可能性が高い。これでは、国内景気の回復に不可欠な雇用増が期待できない。
こうして雇用増ひいては収入増が期待できない中で、物価を上昇させると言い続ければ、将来の生活不安から消費は収縮するだろう。
その一方で、金融緩和によって低利の資金を借りやすい富裕層は投機に走り、一時的な利益を手にするだろう。そしてその利益は外国製高級車や外国製高級ブランド品の購入に充てられ国外に流出して行く。こうして流出した金は、国内には何の利益をもたらさず、ただ損害だけをもたらす。このような金融緩和政策によるネガティブな副作用をいかに察知し抑えるかと言うことは重要である。
国会答弁では日銀に丸投げに見える安倍政権が、ここに挙げたような副作用や反作用にいかに目を配り、早期に対策を立てて対処して行けるのかを注視しなければならない。それこそが今後の経済政策のさい重要点だからだ。
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