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October 01, 2012

アクリル酸タンク火災

日本触媒化学の網干工場でアクリル酸タンクの火災と爆発が起き多数の死傷者が出た。これについてニュースで簡単な解説がされているが、少々抜けている点があるので補足したい。

アクリル酸は高吸水性樹脂(吸水ポリマー)の原料で、引火点54℃、発火点360℃、沸点141℃の液体だ。これを用いたアクリル酸樹脂は女性の生理用品やおむつに使われるおなじみの物だ。また、吸水性を利用して土壌改良や屋内の植物栽培で土代わりに使われる。

これを樹脂にするには、分子を連鎖反応でつなぎ(これを重合反応と言う)巨大な分子にする。この重合反応は常温でも緩やかに進むが、加熱したり反応促進剤(触媒)を加えることで促進される。温度の影響については反応の様式によって異なるが、大雑把に言えば10℃上昇すると反応の速度が2倍になる。つまり、重合反応で発生する熱を除去せずにいると温度が上昇し、上昇すると反応が早くなるのでますます強く発熱する。これが続くとついには反応の暴走(暴走反応)と言われる状態になり、最後には容器内の圧力が上がりすぎて吹き出したり、容器が破裂して引火したり発火したりすることになる。このような設定外の温度上昇に対しては、あらゆる手段で冷却して温度が下がることを祈るしかない。(アクリル酸のように水に溶ける物の場合は、大量の水の中に排出する方法がある。)

アクリル酸に限らず、重合における反応の暴走は高分子製造ではもっとも恐れられている現象のひとつで、しばしば爆発事故を起こしている。実際に十数年前にも、すぐ近くにあるダイセル化学の網干工場でアクリル系樹脂の反応容器が爆発事故を起こしている。このときは電気系統の故障かポンプ自体の故障で冷却水ポンプが止まり、重合反応容器の冷却ができなくなった事が原因だったように記憶する。さらに、20年ほど前には住友化学の大江工場で、エポキシ樹脂製造プラントの廃液タンクに触媒が混入したため反応暴走が起こり、爆発事故で従業員の死亡者を出している。

補足;
このように、原子炉以外にも冷却水(液)ポンプの停止で冷却できなくなったため爆発事故につながる施設は多数ある。このような施設ではポンプのメンテナンスを入念に行っているが、それでも予期せぬ故障は起こりうる。また、停電対策として自家発電装置を備えているが、せいぜい半日分の燃料しか備蓄していない。従って、現代においては突然の大規模停電がいかに恐ろしい物であるかを、もっと一般人に知ってもらう必要がある。

補足2(2012/10/01);
このような重合性の化学物質も研究用に試薬として販売されている。このような場合には、常温では重合反応が始まらないような薬剤(重合禁止剤と呼ばれる)が添加されていて、流通・保管中に反応して発熱しないようになっている。

補足3(2012/10/02);
アクリル酸の仲間の化学薬品としては、アクリル酸エステル類があり、これは耐候性の良い塗料や接着剤の原料として用いられている。

また、水槽や様々な樹脂成形品に使われるいわゆるアクリル樹脂は、少し構造(骨格)が異なるメタクリル酸メチルエステルを重合させた物で、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)と呼ばれる。アクリル樹脂は透明度が高いのが特徴だが、やや割れやすい性質があるため、柔軟性を持たせて割れにくくする目的でメタクリル酸ブチルエステルなどが添加(共重合)される事がある。

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