原子力発電所の限定再稼働には反対
原子力発電所の再稼働は九月末までの期間限定にすべきとの主張がある。しかし、私はそれには反対だ。九月末で運転を停止するのであれば始めから動かさない方が良い。
原子力発電所に限らないが、電気器具のように大型のプラントは簡単にスイッチで動かしたり止めたりできるような物ではない。大規模なプラントは動かすにも止めるにも事前の周到な準備が必要で、事故防止の為に手順を守って行わなければならない。そして起動と停止の操作中は、プラント全体のバランスが崩れているうえ、定常状態にはない機械的ストレスがかかるのでトラブルが発生しやすい。定常運転時よりも数千倍も事故の危険性が高いのだ。これは大規模プラントの運転にかかわる者達には日頃からたたき込まれていることだ。
今回の再稼働を容認した理由は計画停電の回避だと言うが、同じ様な電力危機は次の冬にも、そして来年の春にも予想される。10月始めから停止操作を初めても完全停止には2週間以上かかるだろう。そして11月始めには冬の電力不足に備えて起動操作を始めなくてはならない。それは今後10年近く続く。
なぜならば、どのような方式にしろ大規模エネルギープラントの建設には、それぞれ10年以上かかるからだ。従って、百カ所以上必要と思われる代替エネルギー源の確保には数十年が必要になる。平行して国内のエネルギー需要を減らすとしてもだ。そしてエネルギー需要の急激な抑制は深刻な経済衰退を伴うだろう。しかし安易に起動と停止を繰り返して大事故を招くよりは遙かによい。
だから原子力発電所の期間限定再稼働には反対する。全く動かさないか、今後も継続運転するのかのどちらかにすべきだ。
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