三井化学のレゾルシン工場で爆発事故があり、設備が大破したようだ。
三井化学はレゾルシン製造の国内シェアが高く、レゾルシンから製造される各種製品の供給が滞る事態になりそうだ。国内競合メーカーは1社あるが、上期の製造分は既に出荷先が割り当て済みのはずだ。また、経営効率化で販売実績に見合った設備能力しか保有していないから、増産余地はあまりないだろう。インドや中国などの外国製品もあるが、ISO9000シリーズ等の品質保証規格を満足しながら切り替えるには時間がかかる。下流の製品を含めて、半年ほどは市場が混乱しそうだ。 |
レゾルシンは多価フェノール類の一種で、ポリフェノールの一種でもある。化学原料としては、ゴムや粘着テープの粘着性付与剤や、エポキシ樹脂原料、ビスフェノール類(これらも立派なポリフェノール)、化学染料などの製造に使われる。つまり、タイヤや粘着テープなどのゴム工業、エポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂などの高分子工業が大きな影響を受けることになる。 |  |
週明けにはこれらの分野の企業の株価に影響が出るだろう。 |
追記;2012/04/23 その後の報道では、熱源用の蒸気発生プラントでトラブルが起きたための緊急停止操作中の事故だという。
プラントの種類を問わず(原子力も含めて)、立ち上げ時と停止時にはトラブルが起きやすい。緊急停止時にはなおさらだ。停止操作中にミスがあったのか、緊急停止操作手順書に誤りや書き落としがあったのか。あるいは緊急停止操作手順書で想定されていなかった事態が発生したのか。今後原因究明の過程で明らかになるだろう。
追記;2012/04/23(Ⅱ) 調べ直してみると、いつの間にか競合メーカー(住友化学)の製造能力が大幅に拡大されて三井化学の3倍になっていた。三井化学の能力が約30%と認識していたのだが、それよりは若干下がっている。ただし、需給のタイトさについてはあまり変わりがなさそうだ。
三井化学と住友化学の合併計画は破談になったが協業は続いているはずなので、コスト上住化法が有利と見て住化設備を拡張したのだろう。現役を離れて何年も経つうちに状況が変わっていた。申し訳ない。 追記;2012/04/25 レゾルシンの消防法危険物としての性質や人体への有害性については、製造メーカーや取扱商社が発行しているMSDS(マテリアル・セーフティ・データ・シート)に記載されている。MSDSは販売先に渡すことが法令で定められており、記載すべき項目と書式もまた法令で定められている。
それにしても、化学屋の感覚からはとんでもないと感じる用途もあるようだ。美白化粧品には必須の成分だそうで、同じ目的で輸入栄養食品に添加されていることがあるかもしれない。化粧品や栄養強化食品を個人輸入する場合はご用心を。
追記2013/09/10 世界保健機関による環境と健康への影響の評価報告書
IPCS UNEP//ILO//WHO 国際化学物質簡潔評価文書
Concise International Chemical Assessment Document No.71 Resorcinol(2006) レゾルシノール 世界保健機関 国際化学物質安全性計画 国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部 2009 |
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