また見捨てられた大阪
三井・住友グループの信託銀行三行が合併した。新銀行の本社は東京に置かれ、東京・大阪両本社制はとられないようだ。また、住友グループの大企業が大阪を見捨てたことになる。
関西系大企業が次々と大阪を見捨てて行くが、その最大の理由は政府中枢から遠いこと、そして日本各地への交通が不便なことの二点だろう。
前者は戦前から続く政府機関や政治家たちの体質だ。政府機関や中央の政治家たちは何かに付け民間企業の政府関係担当者を呼び出し、情報を求めたり要求を突きつけたりする。そしてその呼び出しに直ちに応えなければ機嫌を損ね、報復を受けることもある。だから、東京以外に本拠を置いている大企業も政府機関や政治家に対する窓口は東京に置いている。そして、その窓口は本社機能の一部であり、幹部の直轄になっていることが多い。また、企業幹部が政府機関や政治家の呼び出しに応じて出かけなければならないこともある。その為に担当役員を東京に常駐させている企業も多い。他企業との折衝や業界団体の会合も、東京に本社多く企業が多いため東京で行われることが多い。これらは全て本社機能を東京に集める動機になる。歴史的なしがらみから2本社制がはやった時期もあったが、経費節減のため本社を東京のみにする例が多くなった。もっとも10年以上も前から、大阪本社は空洞化してしまった企業が多かったのではあるが。住友系でもそれが当てはまる企業は多い。
後者は、新規に設立される企業が東京に集中しており、東京立地の理由として取引先や同業他社へのアクセスがよいことがあげられることが多い。東京に窓口を置いている企業が多いことの他、日本各地への足の便が良いことが理由だ。それに較べると、大阪は足の便がはるかに悪い。取引先へ最短時間で行けるルートが東京経由になることも多いのだ。これは大阪立地を否定する大きな動機になる。
それやこれやで、ますます大阪の地盤沈下が進み、それが地盤沈下にさらに拍車をかける。かつて訪問した住友系大企業の大阪本社内に人がほとんどおらず、デスクも広いフロアの一部にしか置かれていなかった光景が、地盤沈下した大阪経済の現状に見事に重なる。
恐らく、大阪経済の地盤沈下対策の重要な要素はアクセスの改善であり、もう一つは政府機関や政治家との政治的関わりが少なくて済む中小製造業の振興だろう。家族の後継者がいない企業を従業員が集団または個人で引き継ぐ際の金融的支援など、地方自治体にできることは多数あると思うのだが・・・・。
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