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March 23, 2012

急成長モデルの終焉

パソコン業界の売れ行き不振が報じられている。大げさな報道では「いくら値引きしても売れない」とまで言われているようだ。同様なことは薄型テレビについても報じられているが、こちらの背景はパソコンとは異なっているように思える。

パソコンについて言えば、過去30年間、数年ごとの新OSとCPUの性能アップで既存製品を短期間で陳腐化させ、4~5年毎に買い換えさせるというビジネスモデルで急成長してきた。これにはパソコン雑誌も新型をはやし立て、メーカーに協力してきた。

しかし今、パソコンの情報処理能力は一般人の日常の要求をはるかに超えるまでに向上し、数年前のモデルでも処理能力に不足が感じられないようになっている。そこでソフトウエアメーカーもハードウエアメーカーも新機能の追加に躍起になっているが、日常使用する機能は既に完備されており、追加される機能は日常的な必要性が低い物が大半になっている。つまり、新機能も一般使用者にとっては魅力が無いと言うことだ。また、パソコンも既に広く行き渡っており、買い換え需要が中心になりつつある。

しかし、上記のような新製品開発姿勢の結果新機種の魅力が薄いので、一般使用者の買い換えサイクルが長くなり始めている。現時点で、買い換えの動機としてもっともありそうなものは、「手垢で汚れてみすぼらしくなった」、「システムバックアップ電池が切れて設定がリセットされてしまう」などかもしれない。私が時々やる、「キーボードに飲み物をこぼした」もあるかもしれないが
電池切れはボタン電池を交換すればまた5~7年ほどは使えるのだが、販売店は「もう旧式だから、お金をかけて故障を修理するよりも新型に買い換える」よう奨めると思うが、これは詐欺に近い。

また、「子供が大きくなったので買い与える」需要も、少子化の日本では量的な期待はできないだろう。

それはともかく、我が家で稼働しているパソコン5台のうち2台は既に10年以上使っている。これでも、アプリケーションの立ち上がりが遅いのを我慢すれば、インターネットやメール、文書作成などには十分使える。さすがにゲームや動画処理は搭載できるメモリーが少ないこともあって無理だが、そのような作業は少ない。また、使いもしない機能がてんこ盛りの新しいバージョンではなく、必要な機能だけは揃った旧バージョンの「軽い」アプリケーションで使っていることも、ストレス無く使える理由になっている。臨時に移動してデーターを取り込む等という用途などにもこれで十分だ。

一方、主力のデスクトップ機も4年ほどになるが、こちらはメモリー搭載量を多くしているので、大画素数のデジタル写真や音楽データをいくつも読み込んで編集・加工する際にもストレスはない。

と言うわけで、パソコンが行き渡り新型の魅力も薄れている先進国では、従来の「陳腐化による需要喚起」というビジネスモデルが陳腐化していると考えるのが正しいようにおもう。

付け加えれば、薄型テレビが売れない理由は、デジタル化特需でこの2~3年内に大量に販売した反動だ。テレビも一度買うと10年前後は使う耐久消費財だ。少なくともあと5年ほどは、日本国内の買い換え需要は落ち込んだままだろう。大画面化も日本の住宅事情では期待できない。昨年メディアがもてはやした3Dも、眼鏡無しでどの位置からでもきれいに見えるようにならない限り普及は期待できない。ネット機能もパソコンの普及が進んだ現状では購買理由にはなりにくい。

と言うわけで、薄型テレビ事業の経営が苦しいというのは、明瞭に見えていた特需終了後の反動に備えることを怠っていた経営陣の不手際あるいは無能が原因としか言いようがない。

追記(2012/03/24);
パソコンについては、新型の高速CPUを持つ物の方が同時にいくつものアプリケーションを使う作業に有利だと指摘する人も少なくないだろう。しかし、複数のアプリケーション間でクリップボードを経由してデータをやりとりしながら作業を行う場合を除けば、それが同一のパソコンで無ければならない理由はない。

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