政治における迷信;政権が変われば景気が良くなる
選挙の度にメディアを中心に喧伝される迷信がある。それは「政権が変わることによって景気が良くなる」ことを期待する、だ。
だが、経済がいわゆる「グローバリゼーション」によって国際的に緊密に結びつくようななった今、一国の政治家がその国の経済状況を単独で変えることは事実上不可能であり、変えられるというのは幻想に過ぎない。もちろん、経済問題は野党にとってもっとも簡便な攻撃材料であり、大衆受けもし易い。だから真っ先に「私が」、あるいは「我が党が」政権を取れば景気を良くすると口を揃えて言う。
しかし一国で何か制度的な変更で自国経済を活発にしようとしても、各種の条約による縛りや、他国から自己主義だとの非難を受けて自由にはできない。そこで、大規模な財政出動を行おうとしても、国家財政はこれまでの支出で火の車である上、国債の発行も後の世代の負担を考えれば野放図には発行できない。また、国債で得た資金で財政出動を行っても、それによる民間利益のかなりの部分が海外企業に持ち去られ、効果が減少してしまう。しかし、海外企業を排除することは各種条約で禁じられていてそれもできない。
結局、現在では一国の経済問題をその一国内で解決することは不可能になっているのだ。従って他国の協力を取り付けることが不可欠なのだが、これは各国の利害が対立するためほぼ不可能に近い。協力を取り付けられたとしても、政策の効果をほぼ帳消しにするような協力国に対する見返りを求められる。
よって、野党時代盛大に政権を非難し、自分たちは改善できると主張しても、それは選挙用のスローガンで終わるしかないのだ。それは世界各国の現在の状況が証明している。
「政権交代で景気が良くなる」と言うのは、今や単なる迷信、あるいは幻想に過ぎないのだ。
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