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August 28, 2011

邪馬台国はどこだ?

古新聞を整理していた時、「邪馬台国畿内説」を激しく非難する書籍の広告が目にとまり、思わず笑い出してしまった。

これは「邪馬台国九州説」の研究者が出版したもののようだ。近年の発掘成果によって、「邪馬台国畿内説」が「優勢(敢えて有力とは言わない)」になっているのに危機感を感じたためだろう。「畿内説」と「九州説」は学閥の絡みもあって、両陣営とも譲る様子がない。

私の立場を言えば、「関東から沖縄の間のどこにも可能性がある」といったところだ。理由はいくつかあるがその一つは、「邪馬台国が大和であり、畿内にあったとすれば、なぜ神武東征神話が必要だったのかが理解できない」ということだ。邪馬台国=大和=畿内」であれば、東征する必要などなかっただろうからだ。「記紀」に書かれている東征の動機は、とってつけたようで合理性が感じられない。天皇家の祖先は邪馬台国とは起源が異なるので、東征神話によって発祥の地の南九州と畿内を結びつけ、大和の支配者としての正当性を主張する為だったのであろうか。

また、「魏志、倭人伝」についてもいくつもの疑問がある。その一つは、倭族の国として列挙されている中にいくつもの同一の語幹があることだ。それらが国と言うほどのものでは無く、実は単なる地名だったのかもしれない。もっとも、古代中国の「国」もごく小さなものであったようだが。

さらに、「魏志、倭人伝」の原文を注釈書と比較しながら読んでいるうちに気づいたことがある。それはこの書が書かれた当時の中国人には、倭族の中心は揚子江河口部の東という固定観念があったのではないかと言うことだ。「夏后小康之子封於会稽」という記述と関係するのだろうか。この記述の直後に「當在会稽東冶之東」という記述があり、これに従えば九州南部が該当する。

九州南部には、後の遣隋使や遣唐使の出港地として知られる「坊津」があるが、これとも関係があるのかもしれない。当時の倭人が陸伝いに安全な航海ができる対馬・朝鮮半島南部・山東半島ルートではなく、直行ルート(*)で中国に渡航していたと言うことなのだろうか。

(*)目的地の中国の杭州とは緯度がほぼ同じなので、行き帰りとも等緯度航法が使える。

これに加え不思議なことは、「魏志、倭人伝」には魏にとっての古代から倭国(人)が中国王朝と盛んに往来していたことが記されている。(前記の夏王朝が存在したとされる時期は実に4000~3500年も昔の、日本は縄文時代のことだ。)それならば倭人の中に中国語に堪能なものがおり、中国の王朝への親書などを書くために文字を使うことも知っていたはずだ。(「魏志」の異本の中には毎年耕作・収穫の記録を作るとの記述もあるらしい。)それならば、女王国以前の記録(木簡・竹簡類、あるいは土器への墨書)の痕跡があっても良いだろうと思う。漢字を使って倭語を記述するいわゆる「万葉仮名」は、「記紀」の遙か以前からあったと思われる(学説もある)だけに、これは実に不思議なことだ。「記紀」や「風土記」が作られた時代に、大和朝廷によって古記録が強制的に廃棄されたのだろうか。

と言うわけで、「魏志、倭人伝」と古代日本の考古学資料との間には疑問点が多い。今後、当時の文字記録の痕跡などが発見されれば多少はなぞが解けるかもしれない。

追記(2011/08/28);
上記の観点から、「魏志、倭人伝」中の倭人の国名や官職名は中国人による音訳ではなく、倭人が中国への文書中で用いていた「万葉仮名」流の表記である可能性もあると思うのだがどうだろう。「万葉仮名」として読むと、何か見えてくることがあるかもしれない。

追記(2020/11/01);
しばらく前に見た邪馬台国に関するNHKの番組中で、中国の学者が「神武東征」や地名の類似から邪馬台国は始めは北九州にあったが後に機内に移動した可能性があると述べていた。 それに従えば、邪馬台国があった場所は北九州と畿内の両方だった事になる。

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