税金という資金還流システム
21世紀に入って、日本では税金という資金還流システムがうまく機能していないように思う。
そもそも税金とは、国家が国民のための事業を行う原資であり、富む者から貧しい者へ資金を還流させる為のシステムである。これがうまく機能している国家(政権)は国民の支持を得て長続きし、うまく機能していない国家(政権)は短命に終わる。
たとえば、国家は様々な事業をを行い、それに従事する者に報酬を支払うことで庶民の生活を支援する。古代エジプトの巨大なピラミッドや神殿の建設は、単に王権を誇示するだけではなく、ナイル川が増水して農作業ができない農民に、仕事を与え報酬を支払うための公共事業の性格も持っていたと今は考えられている。であればこそ、農民もこれらの建設を支持した。それがエジプトの古代王朝をあれほど長く存続させた理由だろう。極言すれば、王権が衰退したから大規模事業が行われなくなったのではなく、大規模事業が行われなくなったので国民の支持を失い、その結果として王権が衰えたのかもしれない。
また、国家は同じく国民に対する様々なサービス事業を行い、これも庶民に仕事を与える手段になる。たとえば郵便事業は、貴族や裕福な商人など使用人を使える者以外は手紙を自由に送れなかった時代に、庶民が安い費用で簡単に手紙のやりとりができるようにするため国家が行うサービスとして英国で始められた。そしてこれはまた、そのサービスを行うため多くの人を雇用し収入を与えることにもなった。それを単なる収益事業とみなして民営化した小泉改革は勘違いも甚だしいといえるのだ。
国家が行う事業には、このほかにもそもそも収益を上げることが目的ではない、あるいは収益を考えるべきではない物が多数ある。道路、港湾など、国民生活に必要な施設の建設は古来税金を原資として行われ、それがもたらす経済発展によって庶民に仕事と報酬をもたらし、その結果として税収が増えることによって資金を回収すべきものと考えられてきた。個別事業の採算によって判断するというのは根本から間違っているのだ。
もちろん事業を行う上での非効率は修正しなければならない。しかし国家が行う事業は採算を考えるべきではない物も多数あるのだ。その事を忘れてはいけない。
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