年金の支払先不明問題は、少し前に話題になった保険金不払いと全く同じだ。どちらも、「払わないで済めばそれに越したことはない」、「請求しないものが悪い」と言う考え方が根底にあることで共通している。
今回の問題は、「政府は庶民の利益を考えない」という沈積していた不信感を一気に噴出させてしまったと言える。不信の対象は社会保険庁だけでなく、いまや監督官庁である厚労省、さらには政府全体になっているのだ。
この状態で、社会保険庁の手直しや時効停止と言った小手先芸では、信頼回復には不十分だ。政府全体が庶民の利益を守る様に変われるのかが問われているのだから。まして、「不明分を1年で解明する」などと、その場しのぎに出来もしない事を言っても、不信感は増すばかりだ。種々のミスで錯綜してしまった大量のデーターを、正しい状態に戻すことがどんなに困難で手間がかかるか知るものには、10年でも完了する確信は持てないだろう。
今求められているのは、不明な支払先を”継続して突き止める”とともに、原因と責任の所在を明らかにし、納得できる再発防止策をたてて公表することだ。
政府は保険会社には再発防止策を提出させ、行政処分という形で責任をとらせたが、社会保険庁と監督官庁である厚労省にはどう責任をとらせるのか。政府が信頼を回復するには、関係者の処分だけではない厚労省の体質改善が不可欠だ。
最後に、この問題の背後にもコンピューターシステムに対する盲信がある。入力ミスをどう防ぐのかと言う点で、システムに欠陥があった事は明らかだ。コンピューターシステムでのエラー防止には、ヒューマンエラーも含めて考えなければならないという視点がなかったのだろう。1億人の対象に対して5千万件のエラーというのでは、このシステムは破綻しているという方がよい。
Recent Comments